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ALKINIST -あるきにすと- 2009年01月

地図に載らない町 

徒歩の旅に地図は欠かせない。

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現在使用しているものは地図と言うより地図帳。
中国全土をカバーしているのでこれ一冊で済み、精度はまずまず、都市間に点在する幾つかの町も記載され、重宝している。

地図を睨み、「ここまで行こう」とある程度の目星をつけるのだが、困るのは飯。
昼頃に町を通れそうにない時には、地図に載っていない小さな町の存在を願うしかない。


今日の目的地は信陽から40キロ程離れた町。
地図で確認する限り、途中、町は見当たらない。
昼が近付くにつれ空腹を感じ、「町よ出て来い」「飯屋よ出て来い」と存在するのかさえ分からない町が現れるのを願う。


12時30分、待望の町が現れた。

すぐさま食事のとれそうな場所を探し、直行。
手袋をはめていても指先がかじかむ程の寒さだったこの日、体を温めようと麺を頼んだ。
店主と筆談を交えながら話し、麺が出来上がるのを待つ。

そして出てきたのがこれ。

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2人前くらいはありそうなボリューム。
空腹であったものの、最後の方は無理矢理胃袋に押し込み完食。
その後も少し話し、居座ること40分。いつもより少し長い昼休み。

支払い時、「御代は受け取れねえ」とばかりに受け取りを拒む店主に無理矢理お金を握らせた。


「お金なんかよりその気持ちが本当にありがたいんです」


なんて言えたら良かったんだけど、そんなこと中国語で言えるはずもなく。
「謝謝、謝謝」と感謝の言葉を繰り返すことしかできず。

身も心も温まり、地図に載らない町をあとにした。


地図に載らない町を巡る旅はまだまだ続く。



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<写真>
歩行中、おじいちゃんに話しかけられ筆談。
言葉通じずも、漢字でコミュニケーションがとれるのは助かる。

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<写真>
田舎の町で髪を切る。

河南省某市 

現在河南省某市に滞在中。

合肥を出て以来、ネット環境が整っていそうな街を4つ程通るも、中途半端に昼頃到着だったり、その他色々な事情があってスルーしてきた。

本当に久々の街。
宿は都市部なだけあって1泊50元。
10元値引きしてもらっての値段。
田舎では5元、10元の宿が主だったので、「高過ぎんぞ」と思い、1時間ほど安宿を探すも見つからず。

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値段が高い分、宿は快適。

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ちなみに昨日の宿はこちら。
地下の倉庫にベッドが置いてある。10元。


ホットシャワー付の宿なんていつ以来だろうと思い返せば、南京以来。
部屋に荷物を入れ、早速汗を流す。

さて、明日は44キロ先の信陽を一気に目指し、その後南陽まで休まず行く予定。
南陽までおよそ245キロ。
南陽到着は予定通りいけば6日後の夜。

旅ときどきウルルン 

「バスだと素通りし、自転車だと停まることを躊躇してしまう。そんな場所を時速4キロの徒歩という手段で訪れたい。徒歩だからこそ出会える人達がいるはず」

なんて事を事ある毎に言ってきた。
偽りなんか全くなく、今でもそういう気持ちでいる。

しかし、人を信じるということはとても難しいもので。


河南省のとある田舎。

ぼくはここである一家と出会い、数日を共に過ごした。
そもそもは昼食をとるために訪れた飯屋。
ここで色々と話し、仲良くなり、泊まっていけという事になったのだけれど。

最初10元と聞いていた昼食代(頼んだもの意外にも飲み物やら色々とつけてくれた)を支払おうとするも受け取り拒否。
近くの街の高級ホテル内にある風呂にも連れて行ってくれ、3週間振りの入浴、久々の洗髪をすることができたが、ここの支払いも彼ら持ち。

金を払わなくて済んだからというわけじゃなく、こうして何かしてやろうと思ってくれる気持ちに心から感謝する反面、「何か魂胆があるんじゃないか」「こうして風呂に入っている間にも荷物を漁られてるんじゃないか」とどうしても彼らのことを信用できないでいた。


これまで旅先で会った人達の中に心を許したばかりに睡眠薬強盗に遭い、全資金を奪われたという人を何人か知っている。
そのためか、冒頭のような気持ちではいるものの、異国の地に誰とも知らぬ中国人、悲しい事に完全に心を許すまでには至らなかった。

風呂から戻り、真っ先に荷物のチェックをする姿はさぞ卑しく、醜い姿であっただろう。
なくなっているものなど何一つなかった。


ぼくはここで中国の新年である春節を迎えた。
日本のお年玉のような習慣があり、彼らに倣い、子供に10元ほどをあげようとするのだけれど、子供もしっかししていて「あなたからもらうわけにはいかない」と。
「いいから、いいから」と無理に渡そうとするも、周りに制される。
逆にぼくの手にはおじいちゃんからの10元が握られていた。
断るも、「お前は朋友だから」とおじいちゃん。
「朋友」と言ってくれた事に対する嬉しさ、そしてただただ申し訳なく思った。
色々と良くしてくれたのにも関わらず、この時まで完全に信用していなかったのだから。
おじいちゃんからもらった10元は大切にしまった。


幾度となく出発しようとするも、「明日は除夕だから」「春節だから」と彼らはぼくを引き留め、その度にぼくは根負けし、延泊し続けた。
その数4泊。

見返りを期待しない純粋なもてなしは、心の奥底にぐっとくるものがある。
そして今、この家族からの恩に報いるにはどうしたらいいか考えている。
彼らとの約束は西安から写真を送り、ロカ岬に着いてから手紙を出すという事。
お金も受け取ってもらえず、今のぼくにできることはこれくらいしかない。


今後、中央アジア、イラン、トルコなど、過去の経験上、温かく迎え、もてなしてくれた国々を訪れる。
そしてその度に葛藤するのだろう。

どの程度心を許し、警戒心を持つか、その線引きがとても難しい。
せっかくの出会いを警戒心を持ち続けたがために残念なものにはしたくないし。
逆に心を許し、警戒心を解いたがために騙されたくもない。


別れの朝。

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2箱のタバコ、みかん、りんご、ピーナッツなどを持たせてくれた。

「謝謝、再見」と、皆と握手。
おじいちゃんは涙ぐんでいた。

いつまでも手を振る彼らを背に、次の町へと進むぼくの胸中は、心からのもてなしに対する感謝、別れへのつらさと共に、申し訳なさが交錯していた。

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※朋友=友達 謝謝=ありがとう 再見=さようなら

春節 

ほんの3週間前に新年を迎えたばかりなのに、また新年を迎える。

「春節」

中国における新年。
一般的な大晦日、元旦より大きな意味を持つ。
今年の大晦日は翌日の初歩きに備え日付が変わる前に早寝、大変地味なものであり、ぼくにとってもこの春節で新年を祝えるということは嬉しくもある。

大晦日にあたる春節前日の除夕。
いつもより種類の多い料理がテーブルに並んだ。

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食後は爆竹に花火。
昼間からいたる所、本当にいたる所で爆竹の音が響き続け、夜もまた花火が上がった。

この春節という中国の文化を一般家庭で迎えられたことは幸運であった。
子供達はお年玉の集金に忙しく歩き回り、微笑ましい光景。
新年の挨拶回りだろうか。
近所への訪問に同行させられ、言葉は通じずも楽しい時を過ごすことができた。

朝から書初めをさせられることになった時には苦笑いであったが。
まさかこの年齢になって書初めをする事になるとは。
日頃から漢字を使う中国人の前で汚い字を書き、恥を晒してしまった。

今はただ素晴らしい出会いに感謝するのみ。
謝謝。



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<写真>
祭りのあと。爆竹の残骸はいたる所で見られた。

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<写真>
春節翌日。扉の御札は新しいものに張替えられる。
大半の店はシャッターを閉ざし、人影もまばら。

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<写真>
麻雀。ややルールが異なる。

6分の1の常識 

当然ながら中国において日本の常識は通用しない。
中国に身を置いている現在、時には多少の戸惑いを感じるものの、中国の常識の中で日々生活している。

河南省との境にある叶集という町を目指していたある日の事。
朝から歩くこと約2時間。

「ああ、またか」と溜息を吐く。

標識に従い、何度も地図を確認したにも関わらず、目の前に現れたのは高速道路の入り口。

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茫然自失、ただ立ち尽くすしかなかった。
しかし立ち尽くしていても先には進めない。

とりあえず、叶集への迂回路を探すため、近くにいた中国人に尋ねるものの、彼の指差した先は目の前の高速道路。

「えっ、リヤカー引いて歩いてなんだけど」

と、ジェスチャーを交えて返答すれば、
彼は大きくうなずいて、再度高速道路を指差した。

ちなみに高速道路入り口には徒歩、自転車、バイクなどの乗り入れを禁止する看板が立っている。

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「迷わず行けよ、行けば分かるさ」

半信半疑のまま高速道路へ向かうも、難なく入口通過。
それどころかニワトリ片手に歩く家族連れ、自転車の2人乗りなど、いるわいるわ。

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日本ならこんな光景を見たドライバーが110番し、すぐに警察が駆けつけるのだろうけど、公安のパトカーは「興味ないよ」と言わんばかりの素通り。
本当に興味がなかったのだろう。

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路肩が広い分、それ程の恐怖は感じなかったものの、横を通り過ぎていく車の風圧が体を襲う。
その度に祈らずにはいられない。
やはり高速道路なんて歩くところではないのだ。

祈りが通じ、約3時間の歩行の末、何とか無事に叶集到着。


全世界の人口の6分の1を占める中華人民共和国。
これが全世界の6分の1の常識なんだと思うとただただ恐ろしくて。



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<写真>
高速道路のど真ん中を2人乗りする自転車。

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<写真>
中国における飲酒運転の罰則。
罰金2千元(約2万8千円)、拘留15日。

ある日の出来事 

偶然入った食堂でメニューを見ていると突然腕をつかまれた。
強い力でぐいっと。
叫ぶ主人に呆然とする自分、訳の分からぬ展開。
どうやらここに置いておいたお金がなくなったと言っているらしい。

はぁ知るかそんなもん。


こういう日に限って災難は続くもので、

昼の出来事にイライラしながら歩く道は延々と悪路が続く。
車輪を軋ませながら何度も何度も段差のある道を上り下り。

「さっさと整備しろや」

イライラが助長される。


そしてまたこの日に限って、宿を何軒も断られる。

メイヨーメイヨーメイヨー。


おまけに食事さえとらせてもらえない。

メイヨーメイヨーメイヨー。


結局、宿のおばちゃんに「ご飯食べたい」と言って作ってもらったチンジャオロース。
苦労の甲斐あってか余計においしく感じられて。

シャワーはないけど、「足をつけなさい」と、たらいにお湯を入れてくれて。

そんな心遣いが本当にありがたい。
嫌なことだらけの一日だったけど、最後の最後に救われた。
おばちゃんのおかげでそう思うことができた。

百ある嫌な出来事より、一つの嬉しい出来事をいつまでも心に留めておきたい。
心より思った。

※メイヨー(没有)=ない

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合肥への道 

「これから半年間よろしくね」

と挨拶をした上海・人民広場ゼロ地点。

とりあえず中国に関しては、この国道312号線沿いを歩けば道に迷うことはないだろうと安易に考えていたのだが。
南京郊外で裏切りに遭ってしまう。


国道312号線高速道路化。


「ちょっと待ってくれよ」

と思うが待ってはくれない。国道312号線は高速道路と化した。


訳の分からぬ展開に高速道路の入り口で焦り、呆然と立ち尽くす。

地図を睨みながら新たなルートの可能性を探るも、一本の道を沿って次の目的地「合肥」へは行けない事が判明。
312号線1本で行くよりはかなり遠回りになるが、3本の省道を渡り歩くルートをとることにした。

「地図を片手にルートの可能性を探りながら目的地を目指すなんて、旅の醍醐味ではないか」
なんて思いつつ。


途中色々あったものの、2つの省道を歩き、3つ目の省道331号線に辿り着いたのは南京出発後3日目のこと。
合肥まであと110キロ、あとは道沿いに歩くだけ。

国道312号線が高速道路と化したことから今回の省道歩きが始まった。
もちろん1本の道に沿って歩くほうが楽に決まっているけど、意外にもこの省道渡り歩きが面白い。

まず第一に自らルート開拓できる点。地図を見ながら自分で選び、検討してどのルートを歩くか考えるのは楽しい。旅とはこうあるべきものじゃないかと思う。

また、地元民と接する機会が格段に増した。現在地の確認だったり、道を誤っていないかなど、些細なことでも地元民に尋ねた。

国道と違い、交通量が少ない点も挙げられる。
排気ガス、砂埃が舞い、クラクションがやかましい国道よりはストレスなく歩ける。
今回歩いた道は田舎で牧歌的な景色、道脇に植えられた大きな街路樹の間を歩くのは気持ち良かった。

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当初の予定より時間がかかり、迂回することで距離もロス。
たくさんの苦労があったけれど、その分得るものはあった。

今後ものんびり省道歩きといきたいところではあるが、合肥より再び国道312号線に戻ることになる。
滞在日数が限られている今、のんびりなんて悠長なことは言っていられないので。



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<写真>
「←合肥」の標識に従って行ったらそこは高速道路で立往生。青地じゃなくせめて緑地の標識にしてほしい。

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<写真>
中国の朝。朝夕は冷え込む。