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ALKINIST -あるきにすと- 2009年04月
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ラフマット 

新疆ウイグル自治区。

当然ながら、街を歩けば、この地で暮らすウイグル人の姿を見かけるし、
ケバブやポロを出す屋台、ナンを焼く店など、これまでの中国では感じられなかったシルクロード的な雰囲気を感じる。

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このウイグルの地にはウイグル人だけでなく、漢人も多く暮らしているためか、民族語のウイグル語だけでなく中国語も話すバイリンガルがほとんど。
道路標識や店、食堂の看板もウイグル語と中国語の2言語で表記されている。

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ウイグル人に、「これいくら?」と中国語で尋ねれば、中国語で答えが返ってくるし、
親切を受けた時、「謝謝」とお礼を言えば、ニコリと笑みを返してくれる。


だけど、どこか引っかかってしまう。

確かに彼らは中国語を話せ、通じてしまうけれど、
ウイグル人でありながら中国人でもあるかもしれないけれど、
挨拶だったり、特に感謝の気持ちを伝えたい時は、彼らの言葉を話すのが礼儀ではないのかと。
「郷に入れば郷に従え」という訳じゃないけど、最低限のウイグル語は覚えておくべきではないかと。


そして始まったウイグル語学習。

まず最初に覚えたのが「ありがとう」と意味する「ラフマット」。

「こんにちは」は「ヤフシムシズ」。

食事を終え、代金を支払って、屋台を去る際、
「再見はウイグル語で何?」と尋ねてみる。
ウイグル人のお姉ちゃんは「ホシュ」と教えてくれた。
「ホシュ」と覚えたての言葉で声をかければ、「ホシュ」と笑いながら手を振ってくれた。

何だろう、この充実感。
言葉一つで彼らとの距離が縮まった気がする。

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オアシスマジック 

気が付けば、手には20元が握られていた。
おばちゃんに手渡した20元。

オアシスライフ1日延長。
ハミ延泊が決まった瞬間。

「フフフフ」とおばちゃんは笑った。


昨夜のうちに荷物をまとめ、散らかっていた部屋もきれいになり、出発準備は完了。

「さあ行くか」
「砂漠へ戻るか」

と、予定通り出発する気でいたものの、
意気込んでいたものの、

いざ起きてみれば、

「行きたくないなあ」
「砂漠に戻りたくないなあ」

と、昔学校をズル休みしたくなった時の様な気分に。

西安や蘭州、張掖でも休み明けというのは同様の気分に陥ったもの。
体が重く、だるい、気分も滅入り、歩きたくない。
それでも後ろ髪を引かれる思いで、それらの街を去ってきたのだけれど。

顔を洗い、歯を磨き、あとは荷物を階下へ運ぶだけとなった。
タイヤを肩にかけ、ポリタンクと食料を両手に持ち、階段を下りる。
1階はもう目の前というところになり、足が止まり、荷物を足元に下ろした。

葛藤し、考える事数十秒。

財布から20元を抜き取り、荷物をその場に残したまま、一人階下へと向かった。

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緑が溢れ、蛇口をひねれば水が出る、街へ出ればおいしいものが食べられ、無線LANが飛び交うオアシス・ハミ。

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そんなオアシスを一歩出れば、強烈な陽射しが照りつける無人の乾いた砂漠が延々と続き、限られた水と食料で過酷な環境下を数日間歩かねばならないわけで。

どう考えたってオアシスの方がいいに決まってる。
おいしいものを食べて、飲んで、ベッドの上で横になりながらネットサーフィンしながらグータラ過ごす。
どう考えたってオアシスの方がいい。

この街のオアシスぶりに感動し、どっぷりと浸かること3日。
オアシスの魅力、魔力にとりつかれてしまったらしい。

「オアシスマジック」

そんな事を思いながら、部屋に戻り、PCを広げた。

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※明日は、明日こそはハミを出ます



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<写真>
植樹作業をしていたウイグル人おじいちゃん。
「この道を緑でいっぱいにするんだ」と教えてくれた。

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<写真>
今日も市場の屋台で昼食。

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<写真>
事故現場。
市場へ向かうほんの1時間前にも全く同じ場所で同様の事故を目撃。
自動車優先社会中国、ドライバーの運転は荒い。

超市 

ハミを出た後は、およそ300キロ先のピチャンを目指す事になる。

地図を見れば、今後のルート沿いは砂漠を表す記号で囲まれ、
いくつかの地名こそ載っているものの、そこに町があるとは考えていない。
ピチャン手前40キロの町までは恐らく無人の砂漠が広がっているはず。

これまでの苦労や失敗を教訓に、しっかりと準備するべく超市へと出かけた。

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超市
超な市
スーパーな市
スーパーマーケット

中国語って面白い。

元々渡航先の国々でのスーパー巡りが大好き。
品揃え豊富な陳列棚を見れば幸せを感じ、そこに並ぶ日本にはない商品、英語やアラビア語、ここ中国では中国語で書かれたパッケージを手に取り、吟味するのがなかなか面白くて。
甘いもの好きのぼくにとっては、併設されたベーカリーなんかものすごく魅力的で。
とにかくこのスーパーマーケットという空間、そこで過ごす時間は本当に幸せなのです。

ちなみに中国におけるほとんどのスーパーではレジ袋は有料。
その点は日本よりずっと先をいっている。

「超市」や「商店」の看板を掲げた小さな個人経営の店は多数あるも、品数豊富な二軒の大型スーパーにて食料や水を揃えた。

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1元=約14円

ラーメン(5食入り)×2 18元
ジャム 3.8元
食パン 5元
水(590ml)×22 18.7元

さらには市場へ出かけ、

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梨×12 16.9元

傷んだものがないか一つ一つ手に取って確認し、選ぶ。

これ以外にも米、レトルト丼、ふりかけなどを携帯。
水も調理用などに10リットルを持つ。

水も十分な量を確保できた。
唯一の懸念は昼食をどうするかという事。
パン、ビスケットは避けたいところだが、梨だけで足りるのか。

まあとりあえずはこれでいくつもり。
しかし重いなあ。



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<写真>
明日からしばらくまともなものが食べられないので、市場にてケバブを食べる。
1本1元。

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<写真>
ケバブを平らげた後は麺。
がっつり食って腹も膨れる。

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<写真>
ハミ中心部。

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<写真>
暑いのであっという間に乾く。

オアシスライフ 

断言できる。

あの茶色く乾いた土地を何日も歩いて、この街に辿り着いた時、
誰だって何か思うだろう、と。
何か感じるだろう、と。

それは安堵感なのかもしれないし、達成感なのかもしれない。
「おおっ」という感嘆の声なのかもしれない。

この街に着き、この緑を見れば、何かを感じずには、思わずにはいられないはず。

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鮮やかな緑の街道を抜けた先に現れた街。
新疆ウイグル自治区ハミ。

ありきたりの表現ではあるが、

「オアシス」

それ以外の表現は見つからない。

周囲を砂漠に囲まれたオアシス。
その鬱憤を晴らすかの様に、街は鮮やかな緑で溢れている。

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この緑がものすごく眩しい。
陽光に照らされているから余計にそう思えるのか、
余りにも緑に飢えていたからなのか、
とにかく眩しく、この緑に生命を感じ、安堵し、何とも言えぬ満ち足りた気持ちにさせてくれる。

緑ってこんなにも安らぎを与えてくれるものだったのかと、オアシスにて気付く緑の持つ力。

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オアシスで精一杯生きる花。
花なんてじっくり見つめる事なんてないのだけれど、足を止め、その美しさに見とれてしまう。
「ロマンチストやのう」と悦に浸りながら。

そんなロマンチックな男は現在引きこもり中。
もう一つのオアシス、我が城に篭城中。

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言い値1泊25元の宿。

「3泊60元(約840円)にしてよ」と交渉。
3日間のオアシスライフが始まった。

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スタンドの電球1つが灯す薄暗い室内。
その中でカタカタとキーボードを叩く音が響いている。

そう、無線LAN。

窓もないこの薄暗い部屋に案内された時は苦笑いするしかなかったが、PCを広げてみればワイヤレスのインターネット回線が飛んでいるではないか。
周囲を砂漠に囲まれたオアシスを飛び交うインターネット回線。
すごい時代になったものだ。

ハミでは曲がってしまったテントポールやペグの修理、デジカメデータをDVDに焼く予定だったが全ての予定を放棄。
汗と砂にまみれた体をきれいにし、洗濯をし、あとは買い物を残すのみ。
もちろん街をブラブラもするけど、深夜までネット三昧。
たいてい1都市で1回、1時間程度しかインターネットは利用しないので、ここぞとばかりにネットライフを送っている。

オアシスにどっぷりと浸かる日々。



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<写真>
ウイグル人。

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<写真>
シルクロードと言えばケバブ。

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<写真>
宿の屋上からの風景。

7デイズ 

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甘粛省瓜州-新疆ウイグル自治区ハミ(哈密)。
およそ350キロにも渡り砂漠と荒野が続く。
その間、3つの町があるだけで、あとは何もない。

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本当に何もない。


風に苦しんだ日。
強烈な陽射しにに耐え、喉の渇きに苦しんだ日々。
限られた水と食料でしのぎ、
顔はもちろん、手さえも満足に洗う事のできない過酷な状況が連日続いたけれど、
歩き続ける事7日、ハミに到着。

この7日間を総括すれば、
「自然の厳しさを痛感、再確認した7日間」
とでもなるのかなと思う一方、
この地で出会った人というのも忘れられない思い出に。

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奥様手作りのクッキーなどを差し入れてくれたウイグル人ドライバー。

「頑張れよ」と水を持って来てくれたり、やかましいんだけどクラクションを鳴らし、手を振ってくれたドライバーも多数。
ホントやかましいんだけど、ありがたい。

暑いし、きついし、何やってんだろって思う事もあるけれど、彼らとの出会いは、そんな事全てを忘れさせてくれる、そんな瞬間でもあった。

厳しい環境下で感じる人の温もり、ホスピタリティというのは胸にグッと来るものがある。
そこが誰も住まない無人地帯であれば尚更。

きつく、過酷で苦しかった7日間。
この7日間は自然の厳しさだけでなく、人間の温かさや優しさ、そういったものを改めて教えてくれた気がする。



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<写真>
思わず足を止め、見入ってしまった風景。
茶色い台地に土壁の家々、緑に雪をかぶった天山山脈、そして青空。

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<写真>
オアシス、道路の両側が対極的。
ここからハミまで緑が続く。ものすごく眩しい緑。

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<写真>
ウイグル自治区入り後、道路標識はウイグル語で併記される。

オアシス 

風の次は炎天下。

容赦なく照りつけてくる強烈な陽射しと、それに耐える日々が続く。

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連日の強烈な陽射しを浴び続けた肩がヒリヒリと痛む。
朝こそは肌寒さを感じるものの、9時頃からジリジリと気温は上昇。
日中の気温は35度程。
この暑さに喉が渇き、渇ききった口の中に不快感を感じる。

思い切り水をカブ飲みしたいところだけれど、限られた水量。
一口一口水分を補給して渇きを凌ぐしかない。

蛇口をひねれば水が出てくるという日常、思い切り水が飲める環境にあるという事は本当に幸せな事なんだと痛感する毎日。

風が止んだ日を境に急増した水分摂取量。

判断ミス。
所持する水量を甘く見過ぎていた。
ここまで暑さに苦しむ事になるとは考えていなかった。

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大誤算。
限られた補給場所。
新疆ウイグル自治区・星星峡以降120キロ近く、町はおろか商店さえもない。何もない。
地図を見れば星星峡以降、道路沿いにいくつかの地名が載っているものの、いざ着いてみればその地名の標識が1本立っているだけ。
本当にそれだけしかない。

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星星峡以降、毎日のように「コーラ、コーラ」と唱え続け、何度も何度もあの赤い缶を思い浮かべる日々。

この日も、喉が余計に渇く事など考えずに準備したパンを昼食に水をチョビチョビと口に含み、喉を潤わせていた。
猛暑の砂漠、日陰すらない炎天下の下でパンを食べるなんて自殺行為でしかない。
何を血迷ったか、パンにビスケットといういかにも喉が渇いてしまいそうな食料しか用意しておらず。
しかも瓜州到着前の食糧危機の教訓から、余るくらいがちょうどいいと、大量に。
我ながらもうダメダメ。

食後も相変わらずの陽射し。
「コーラ、コーラ」と、その事ばかり考え、長い坂を上る。
そして長い坂を上り終えた後に待っていたのは、

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救世主ペプシマン。

突如現れた星星峡以来の商店、120キロ振りの商店。
まさに砂漠の中のオアシス。

すぐさま2本購入し、120キロずっと思い続け、夢にまで見た一気飲み。
「ジュワー」っと口の中で弾ける炭酸、あの喉ごし。
思い切り水分を口にし、代謝も活発に。
額から大量の汗が流れ落ちる。

もうたまらん。

ただ、「格別の味」と言えるのは最初の1本だけ。
ガーっと飲み干したあの1本だけ。
残念な事に2本目は普通のおいしいペプシでしかない。

強烈な陽射しに限られた水というシチュエーション、そして何より120キロ思い続けてきたからこそ、あの味と感動を得る事ができたのではないかと。

この後5キロも歩けば、緑溢れる本物のオアシス出現。

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でも、自分にとってのオアシスは間違いなくこの古ぼけた商店でした。

風吹く朝 

午前5時。

風音とテントの揺れで目を覚ました。
かなりやばい状況なのはテントの揺れ方を見れば明らか。
荷物を外に出し、撤収にかかるも失敗。

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ある朝の惨劇の記録。


瓜州を出た途端、吹き付けてきた強風。
砂嵐がお出迎え。

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風に乗り、空を舞う砂、空を覆う砂。
「おお、すげえ」と感嘆の声を上げたのも一瞬の事。
視界は悪いし、目に砂が入るし、たまらない。

瓜州までは西へ向かって歩いてきたが、次の目的地ハミへは北上する。
追い風が横風へと変化。
追い風なんてかわいいものだった。

横風になって改めて気付く風の威力。
一歩一歩歩くのと同時にしっかりと地面を踏みしめないと体ごと持っていかれてしまう。
歩行ペースも落ち、体力は消耗。

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遠くでは無数の風力発電機が嬉しそうに、楽しそうに風車を回していた。



夕方になっても吹き続ける強風。
およそ1時間、風と格闘した末に敗北。
テント設営失敗。

その後、色々あったものの、風が弱まった一瞬のうちにテントを設営。
すでに周囲は闇に包まれ、月明かりを頼りに一気に組み立てた。
夕食を作る気力もなく、さっさと潜り込んだシュラフの中で感じる不安。

「この風がハミまでずっと続くんだろうか」
「今後どうやってテントを設営するのか」
「本当にハミまで行けるのか」

ハミへの道のり約350キロ。
初日にして、今後の歩行に大きな不安を覚えた。

そして迎えた翌朝の惨劇。

悲惨な朝。
敗北感を感じた朝。
自然の厳しさと己の無力さを感じた朝。