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ALKINIST -あるきにすと- 2010年07月
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ピレネーを越えて 

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スペイン入りしました。

朝の時点で350メートル、そこから1600メートルの峠越え。
国境、峠を越えるまでの8キロはややきつかったものの、アルバニアと比べると楽なものでした。

終わりが見えない山といつ終わるか分かっている山、
終わりが見えない苦痛といつ終わるか分かっている苦痛、
精神的に全く違います。



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<写真>
1600メートルの峠を越える。

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<写真>
ピレネーで出会ったスイス人。
スイスから歩くこと2ヶ月、巡礼中のトーマスとクラウディア。

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<写真>
彼らとはその後も町のカフェ、国境で遭遇。

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<写真>
別れ際、巡礼のシンボルであるホタテ貝を頂く。
巡礼者はこのホタテ貝をぶら下げて歩くのです。

ピレネー 

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君がピレネーか。

ここ数日、ピレネーを見渡せる場所にいたにも関わらず、悪天候でまったく拝む事ができなかったのだけど、そんなピレネーが姿を現したのは昨夕の事。

回復するかと思われた天候も、朝から霧雨。
ピレネーは今日も姿を隠している。

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スペインまで50キロ程。
明日にもスペイン入り。


空を覆っていた雲の間から青空が見え始めた。

さあ行こうスペインへ。
さあ越えようピレネーを。

歩く人 

どんよりとした空の下、道脇に座り、一服していると、後方、今自分が歩いてきた方向からやって来る人影に気付いた。
どうせ現地人だろうと、最初は特に気にもしていなかったのだけど、人影は次第に近付いてきて、彼がバックパックを背負っている事、もしや徒歩旅行者ではと胸が高鳴る。

手を振りながら、対向車線からこちらへと歩いてきた彼はオランダ人。

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「サンチアゴを目指しているのか?」と尋ねてみると、「そうだ」と答えた。

「テントで夜を過ごしているのか」と尋ねてみれば、「いや」と彼は言い、バックパックにくくり付けてあるゴザを指差した。
遠目からは断熱マットだろうと思ったのだけど、実はゴザだった。

「何を食べているのか」と尋ねてみれば、「金を持っていないので、現地人から食料や金を与えてもらい、生活している」と彼は言った。


そう、彼は無銭旅行者。
ゴザを敷いて眠り、人々から食料などを与えられているという彼。
バックパックを背負い、日々移動しているので旅行者と呼ぶ事ができるけど、物乞いと紙一重ではないかと思った。

そして彼はそんな生活を9年送っているのだとか。

正直なところ、彼のような無銭旅行者に対しては否定的で全く賞賛するに値しないのだけど、インドやヒマラヤ、イラン、トルコなど9年間歩き続けているというのは素直にすごいと思った。

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「あなたは何を目指し、何を求め、歩き続けているのか」

先に歩き始めた彼の背中を見送りながら問いかけた。



彼の方が咲きに歩き始めたとは言え、歩行ペースはこちらの方が速く、すぐに抜き去り、次第に後方の彼との距離は広がった。
5キロ程先に町があり、カフェでコーヒーを飲みながら彼がやって来るのを待った。

「なぜ歩くのか?」
いつも自分が尋ねられている事をどうしても彼に問いたかった。

前述した通り、無銭旅行というスタイルには否定的なのだけど、彼にコーヒーをごちそうし、別れ際に5ユーロでも渡そうかとも考えていた。

実際ぼくもこれまで何度か現地の方からお金を渡され、最初は金銭を受け取るのに抵抗があり、「物乞いじゃないから」と拒否したりもしていたけど、彼らは物乞いに金を与えるとかそんな気持ちでなく、純粋な応援として渡してくれているのだと理解してからは素直に感謝して受け取っています。

だから自分もまた同じ様に、彼を応援するつもりでお金を渡そうかと思った。


でも彼はやって来ませんでした。

恐らくは町の手前の分岐を違う方向に進んだのではないか。
フランスの道路標示って分かりにくく、ぼくも地図を見ながら迷い、現地人に尋ね、教えられ、道を誤る事はなかったのだけど、このオランダ人の持っていた地図ってツーリストインフォメーションでタダで配布されているような大雑把なしょぼいもので、間違ってもしょうがないかなと。

おっちゃん、そっちは遠回りなのだよ、
そんな事を思ったけど、これが彼の旅なのかもしれない。
9年歩いている彼にとって、この程度の遠回りなどたいした事ないはず。


彼と会えたのは縁があったから。
縁がなかったので再会できなかった。

そんな風に納得し、再び歩き始めた。

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