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ALKINIST -あるきにすと- 2011年12月

懐の深さ 

居候させていただいているロブ・ダイアン夫妻、カナダから来たダイアンの家族は昨日よりウェスタンオーストラリアへ2週間弱の旅行へ出かけた。


現在、家主不在の居候中ではあるのだが、

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2匹の猫に餌を与えるという重要な任務を与えられているのである。
捕まえようとすればいつも逃げられるので、これを機に仲良くなれたらいいなと思います。


ロブ、ダイアンとはバンクーバーでお世話になったクリス・マルゴ夫妻から紹介され、出会った。
ほんの2ヶ月前まで全く知らなかった人間を2週間弱も無人の自宅に滞在させるなんて、そう簡単にできる事ではないと思うし、懐の深さみたいなものを感じ、ただただ感謝するばかり。

フィラデルフィアで6週間もお世話になったヴァレリー宅でも彼らの仕事中は留守番。
同様に夫妻の心の広さに感謝したものだが、その後も北米では現地の方々にお招きいただき、お世話になる事が多かった。


ユーラシア大陸歩行中も幾度となく現地の方々に助けられてきたわけだけど、その時とはやや異なる。当然ながら人の優しさに優劣はつけられないけど。

英語圏なので他地域に比べ、意思疎通が容易である事が何より大きい。
また国民性なのか、積極的に話しかけてきて、介入してくる事が多く、家に招かれれば、「好きなようにしなさい」と自由を与えられる。
こちらではシェアハウスはごく普通、1軒の家を数人で間借りしていたりするので、抵抗なく他人を受け入れる事ができるのかもしれない。
基本的には親切ではあるけど、先進国にありがちな他人に無関心でクールな人達をイメージしていたのだが、そんなイメージなど見事に覆されてしまった。


当然ながら長い間お世話になった人達ほど共に過ごした時間が長いわけで、たくさんの思い出など脳裏に刻まれ、またこういう人達ほど密に連絡を取り合うのだけど、例え一瞬の事だったとしても、山に砂漠に冬に、色々な場面で救いの手を差し伸べてくれた人達の事も鮮明に思い出す事ができる。

もう2年とか、そんな遠い過去の事になってしまったわけだけど、今一度あのきつかった環境を思い出してみれば、熱いの一言。
胸が熱くなるし、涙を流すわけじゃないけど目頭が熱くなるし、あの時は今以上に先へ進む事に執着していて、西へ西へという一心で歩き、とにかく熱かったなと。
今もまだ旅の途上ではあるけれど、とにかく懐かしく、そんな過去の日々が信じられなかったり。


今年もまたたくさんの出会いに恵まれました。感謝。

真夏のクリスマス 

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12月24日
最高気温37度@アデレード

去年は極寒のカナダで迎えたクリスマスだけど、今年は真夏のオーストラリア。
クリスマスイブはロブの趣味のテニスに同行し、見学。陰で見学してただけだけど暑い。

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ロブの家には暖炉、長い煙突がある。
煙突がなきゃサンタクロースがやって来れないわけで、幼い頃は煙突のある家に憧れていた記憶がある。
昔はサンタクロースを信じ、手紙を書いたり、無垢であったけれど、今何がほしいかと問われれば「金、時間、土地、家」と答えるに違いなく、すっかり汚れてしまった。

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オーストラリア、欧米において、1年で最も重要な日はニューイヤーでも感謝祭でもなくクリスマス。
昼過ぎにテーブルにたくさんのプレゼントが並べられ、娘から母へ、姉から妹へ、とクリスマスプレゼントの交換会。

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居候のみではあるけれど、クリスマスプレゼントをいただいた。
ありがとうございます。

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チキンを1羽買ってきて、オーブンで焼き上げた。
チキンをカットするロブ。

ロブ・ダイアン夫妻はワインが好きで毎日少なくとも1本あるいは2本、時にはそれ以上を飲む。
昼間から1人でワイン1本を空けて仕事という事もしばしば。
ワインは赤派だったど、ロブ宅に来てからは白が好み。今いるサウスオーストラリアはワインの産地なだけあってとても美味しい。

「クリスマスなのでスペシャルなワインだ」とロブ。
しかしこのワインの素晴らしさを理解できるだけの舌を持っておらず、いつもと何が違うのかよく分からず。

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クリスマスとか新年とか、スペシャルな日を地味にテントで過ごすのも嫌いじゃないけど、一緒に過ごしてくれる人達がいる事はとてもありがたく、感謝しなきゃです。

母と姉がやって来た 

母と姉がアデレードにやって来た。
ダイアンのだけど。

オタワ、サンダーベイ、はるばるカナダからやって来られました。
共に立ち寄った街。サンダーベイなんか今年の7月の事なんだけど懐かしい。
オタワからバンクーバー、ニュージーランドのオークランドを経由したとの事だけど、やっぱ飛行機は早いなーと、そんな当然の事を再確認。
オタワからバンクーバーまで歩けば5ヶ月かかるから。



そんなわけでいつもより多くの皿がテーブルに並んだ。

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今日からしばらくはリビングの片隅で眠ります。
引き続き居候生活です。

雨の日曜日 

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ロブの家から見えるアデレードの街。
朝起きてから、あるいは空がオレンジ色に染まった日没間近、そして夜景。
窓の外をぼんやりと眺める事が多い。

日本を出てからもうすぐ3年。
ここまで歩くこと23カ国、たくさんの町や村を通り抜け、山や海や砂漠、雪の中、色々な環境下に身を置いて歩いてきたわけだけど、その土地を象徴する景色、印象深い景色っていうのはそれぞれある。

現在滞在しているアデレードはというと、中心に行く事はめったになく、街を歩く事もなく、何があるのかよく分からないので、個人的にはこの景色がアデレードを象徴する景色。
いつの日かアデレードでの日々を振り返る時、真っ先に思い返すのはロブ達と過ごした日々、そしてこの家から見える景色に違いないだろうなと、今日もまた窓の外を眺めながら思った。


働き始めて2度目の週末なのだが、あいにく今日は雨で、降りが強い時はアデレードのビル群が見えなくなるくらいだった。

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日曜日の今日は、午前中に3時間くらい作業を手伝い、スーパーへ出かけた後は延々と雨だったのでネットサーフィンをして暇つぶし。

働き始めてからは規則的で単調な毎日であるけど、今となっては働くという事は非日常であり、そこそこ楽しんでいる。目的もなくダラダラと過ごす休日も悪くはない。

「働くという事は非日常」と前述したものの、昨年12月から今年の6月上旬まで働いていたわけで、全くの非日常というわけではなくて、今年に限っては歩行日数より労働日数が上回る。今年は半年も歩いてないし、歩行距離も6000キロ程。

ロカ岬に着くまではルートの変更などあったとはいえ、まずまず順調、計画通り。
しかしその後の北米横断、豪州縦断、トロント、アデレードでの労働と、全てが予定外。
行き当たりばったりというか、我ながら計画性のなさが露呈しているなと、今更ながら思う雨の日曜日。

これは出稼ぎなのだ 

働き始めてからの2日は5時半起き。
休日はゆっくりとしたいところだけど、7時前に目が覚め、二度寝しようにも眠る事はできず。

コーヒーを飲みゆっくりした後は休日ではあるけれどロブの庭仕事を手伝う。
居候の身なので仕事が見つかるまでは毎日作業を手伝っていたけど、休みの日もできる限りの事はしたい。

2時間程働いた後、隣の家で仕事。
先週、ロブ・ダイアン夫妻が隣の老夫婦を招き、食事を共にした。
その際、仕事を探している事など話したのだが、時給20ドルという好待遇で仕事のオファーをいただいた。



木を切って運び、50ドルを得る。


時給20ドルは好条件すぎるけど、オーストラリアの最低賃金は時給15ドルと日本などと比べ、とても高い。今働いているところももちろん最低時給以上。

カナダではトロントのあるオンタリオ州が最も最低時給が高くて10ドルちょっと。
半年働いていた職場が12.5ドルくらい、なんと有給付き。

ちなみに調べてみたら、東京都837円。
円高の影響でドル換算すれば10ドルはあるけど、決して高くはない。
それでも東京が最も恵まれていて、650円に満たない所も少なくない。


カナダ、オーストラリアとワーキングホリデーでハシゴ。
これはあくまで厳しい冬、夏を越すため、ロングステイが目的だった。
語弊があるかもしれないが、暇つぶしを兼ねての労働だったのだけど、日本の劣悪な賃金を見ると、暇つぶしなんてとんでもなく、これは出稼ぎなのかもしれないと今は思う。

カナダ、オーストラリアでの労働で過去3年分の旅費を稼げてしまいます。

イソーロー 

仕事2日目。

仕事場はアデレード郊外のワイン工場。
誰かに紹介されたわけでもなく、求人募集があったわけでもないのだけど縁あって、仕事を与えていただける事となった。
職場のボスも「お前どうやってこの工場の事を知ったんだ?」と不思議がっていた。


今お世話になっているロブの家もアデレード郊外だけど、同じ郊外とは言え、アデレードの街を挟んで北と南、全く逆方向で約20キロの距離がある。
歩けば4時間の距離。
徒歩通勤などしてたら往復しただけで1日が終わってしまうのでもちろん却下。
毎朝5時半に起きての電車通勤、電車の乗り継ぎもあり、片道1時間超。


基本的には土日休みらしいのだけど、初仕事だった昨日、「明日も来い」と言われ、いきなり休日出勤。
しかし電車の時刻表を見てみれば土日は平日より本数が少なく、ロブ宅の最寄り駅からアデレード市内へ向かう電車にいたっては早朝の電車なし。
始発電車を待てば確実に遅刻してしまう。

バスで市内へ向かい、電車に乗り継ぐ事も可能だけど、不慣れな街、交通機関。
バスの乗り方も鉄道駅がどこにあるかさえ分かっていないし、バスが遅れたらどうしようとか、乗り継ぎに失敗したらどうしようとか、ものすごく不安で小心者で、普段歩く生活をしている自分からしてみたら、やっぱり頼りになるのは自分自身だと分かっているので、自分の足で出勤する事に決めた。



ロブの自転車を借り、仕事前に20キロのサイクリング。
余計な体力使いたくないけど、電車を乗り継ぐより短時間で到着。
仕事があるだけでありがたく思っているけど、でも通勤可能な圏内とはいえ職場は近いに限る。

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仕事帰りにチャイナタウンに寄って帰宅。
メルボルンのチャイナタウンはびっくりするくらいしょぼかったけど、アデレードはアジア食品マーケットが多く、充実している。
今後しばらくはアデレードにとどまる事になるので日本食を中心に食料にがっつりと買い込み、60ドル超も費やす。たいていの店でカレールーやソース、味噌汁、のりなど買えるけど、お好み焼きの粉を探すのにやや苦労。1軒の店、しかも1袋しかなかった。

現在居候の身、ロブ達には非常にお世話になっているので、日本食でも作らせていただこうかなと。

予定変更のお知らせ 

アデレードから砂漠地帯北部へ至るまで、最大約250キロの無補給区間が数ヶ所あり、5~6日分の飲料、食料を携帯する必要がある。
メルボルン・アデレード間を歩行中、常に考えていたのは飲料の事。
リヤカーの荷台スペースを見てはどこにどれだけの飲料を積み込めるか頭を悩ませた。

正直なところ、5~6日分の飲料、食料を積み込めるだけのスペースがない。
仮に飲料を積み込めたとしても食料を満足に携帯する事ができない。
飲料、食料のいずれかを削るしかない。



「飲料、食料を積み込めるだけのスペースがない」



無補給区間、無人地帯を歩く上で致命的な現実。

荷台スペースが決して広いわけではないというのはカザフスタンの無人地帯などを歩いた時から分かっていた事で、当初はユーラシア大陸後に予定していたサハラ砂漠横断を断念した理由の一つだったりする。
サハラを歩くなら、運搬方法を一から見直す必要があった。


今使っているリヤカーがダメだという訳ではないです。
ユーラシア大陸、北米大陸を横断、2万キロ以上を支えてくれた耐久性に優れたものなので。ただ250キロもの無補給区間を歩く上で、荷台のスペースが十分でないという事。



カナダ滞在中にたまたま写真を見て直感的に決めたオーストラリア縦断。
情報収集する事なく、ビザを取得し、航空券を購入したわけだけど、これから南半球は夏。

「いい季節にやって来たな」と考えていたものの、「ダーウィンなど北部は雨季だ」とカナダ歩行中に出会った徒歩旅行者に教えられ、「夏に豪州の砂漠地帯を歩くのはアホだ」と皆に言われ、「なぜ今の時期に歩くのか」と尋ねられたけど、理由なんてものはなく、来た時期が今だから。
準備不足に情報不足、色々なものが露呈し始めた今になってようやく来る時期を間違えたなと考え始めた。相変わらず適当だなと思った。

砂漠地帯とはいえ、オーストラリアなら大丈夫だろう。
何の根拠もなくそう思い、砂漠地帯を歩くためリヤカーを持って夏のオーストラリアにやって来たけど、見通しが甘かったという事は否めない。


色々と考え、悩んでいた先日、ある冒険家の手記を読んだ。
オーストラリアの中心に位置するアリススプリングから西海岸までラクダ3頭を連れて砂漠を歩き抜いた記録。
冬季の歩行であるにも関わらず、1日当たりの水分摂取量は考えていた以上に多く、ややショックだった。
冬季でこれだけの水を持つなら、夏季に歩く自分が予定していた量では足りないはずで、水分摂取量を見直す必要があった。


しかしもうこれ以上荷台に積めない。


これを読むまでは執念深く可能性を探っていたけど、これが決め手となった。


250キロの無補給区間の中間地点辺りに車などをチャーターし、飲料の補給でもしようかと考えたりもしたけど、ぼくが歩く道は所詮アスファルトな訳で、無補給区間とはいえ交通量も多い立派なハイウェイで、餓死・渇死の心配もないし、サハラ砂漠や交通量のない砂地の道ならともかく、そんな楽な環境下で車をチャーターして補給を受けるとかアホらしいし、そこまでの情熱もない。車をチャーターする金もない。

夜間歩行をする事で日中の暑さを避けることも考えたものの、夜間歩行は好きじゃない。
ウイグルを歩いていた時、1度だけやったけど、深夜にリヤカー引いて歩いている姿なんて怪しいに違いなく、公安から職質を受けるわ、真っ暗なんで景色も見えず、時間がいつも以上に長く感じられたり、デメリットも多く、あまり気が進まない。


予定とか信念とか、色々なものが揺らぎ、崩れてしまいそうです。
信念は崩れませんが、予定は崩れました。


仕事が見つかりました。明日から仕事です。
しばらく越夏します。


一応言っておくと、オーストラリア縦断をあきらめたわけではないです。歩く気満々です。
夏が過ぎるのを待って砂漠地帯へ向かいます。