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ALKINIST -あるきにすと- 2012年06月
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ダーウィンから35キロ地点 

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今朝。

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14時30分。

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夕方。
ハイウェイから20メートルの茂みにテントを張る。

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キャサリンにてボーダフォンのモバイルブロードバンドをリチャージしたので、試しにPCの電源入れてみたらボードフォンのWiFiキャッチ!!!
そんなわけでテントでネット。


現在地はダーウィンから35キロ地点。
もう少しです。

2000キロ振りの再会と新たな出会い 

アリススプリングスを出て、気候も砂漠性気候から熱帯性気候へと変わり、アリスではガクガクと震えた朝の寒さなんて今にしてみれば遥か昔の話。
しばらくは過ごしやすい気候が続いていたけど、キャサリン辺りからまた一段と暑くなったのは確か。


暑い暑いと思い、汗を流しながら歩いていると前方に車が停車。ブーっとクラクションが鳴らされた。
運転席の窓が開けられ、おばちゃんが興奮気味に話しかけてきた。
おばちゃん曰く「以前会った」との事だが、さっぱり思い出せない。

助手席のご主人を見ても、会った事がある様なない様な・・・。
そんな困惑気味の自分を見て「思い出せないの?忘れちゃったの?」と悲しそうな表情をするおばちゃん。
そんな表情をされ、思い出せない事が罪のような気になり、「あー思い出した!」と驚き、久々の再会を喜ぶフリをしておく。


満足したおばちゃんは「あなたと出会った後、ウルルへ行って、ウェスタンオーストラリアへ行って、今ダーウィンから戻ってきたところなの」と教えてくれた。

このウェスタンオーストラリアというキーワードが引っかかった。
そういえばウェスタンオーストラリアへ行くと言っていた人がいた気がする。

全力で思い出して思い出して思い出した。


そして本日2度目の「あー思い出した!」
今度は嘘じゃない。


「以前出会ったのってクーバーペディ近郊ですよね?」
「あなた達はメルボルンから来ましたよね?」
「ぼくに冷たいビールをくれましたよね?」


もちろん答えは全て「イエス」だった。

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ちなみに前回彼らと会ったのは4月25日、クーバーペディ近く。
あれから1ヵ月半、直線距離にして約2000キロ振りの再会。

南から北へ、迷いようのない一本道を歩いているだけだけど、2000キロ振りの再会なんてスケールのでかい話だ。
ロシア・ウクライナ国境では5ヶ月前にカザフスタン・アルマティからキルギス・ビシュケクへ歩いているところを見たというドライバーと会ったりもしたけど、うーんやっぱりでっかいなと改めて思う。


「再会できて嬉しいです」

ご夫婦とガッチリ2度目の握手。南へ向かう彼らの車を見送った。
1度目は特に何も感じずビールをありがとうくらいだったけど、「もうお会いする事はないのかな」と思いながらの2度目の別れ。少し寂しくもあった。




この後しばらく歩いたところで歩行を終えた。

テントでラーメンを作っているとドレッド頭のおっさんがやって来て、「近くにテントを張るからよろしくな」と挨拶に来た。

広い広いオーストラリア。いくらでもテント張れる土地があるのになぜここに?
しかも車持ち。わざわざ近くにテントを張るなよと思いつつ、少し話す。
去り際にリヤカーを見て「自転車か?」とおっさん。
「いや徒歩だ」と答えると「ジャパニーズはクレイジーだ」と言って去っていった。

「うっさいわ、アホ」と思いながら粉末スープを鍋に入れ、仕上げる。
ズルズルと麺をすすり、ハイウェイのほうに目をやると、こちらの様子をうかがっている顔がある事に気付いた。

周囲に家はないし、アボリジニだろうか。
テントの場所を知られるのは嫌だなと、ラーメンよこせと言われるのは嫌だなと思いながら、こちらも様子をうかがったのだけど、ヘルメットをかぶっているし、肌の色もアボリジニとは異なる。
自転車を引いてこちらへやって来たのはアボリジニではなくドイツ人サイクリスト・ジョナスだった。
タスマニアからメルボルン、アデレード、パース、ブルームを経て現時点で豪州を半周。


「ハイウェイからテントが見えた?」と尋ねてみると、テントではなくおっさんの車が見えたから来たのだとか。
彼もまたこんな所で人力で旅する人間と会えた事を喜んでくれた。

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おっさんもやって来てジョナスと話をしていた。
こんな所に3人の人間が集うなんて。

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我々は北を目指すのである。
翌朝はジョナスより30分早く出発したけどすぐに追いつかれ、追い抜かれ、あっという間に彼の背中は見えなくなった。

Katherine 



アリススプリングスにいたのってほんの少し前にも思えるけど、キャサリン手前で後ろを振り返り、アリスへの距離標識を見て、「けっこう歩いたなー」と思う。
アリス出発から22日目、約3週間を費やしてのキャサリン到着。

マタランカ付近で同じように後ろを振り返り、アリスからの歩行距離が1000キロを超えている事を知った時、「単調で退屈な景色が続く日々の中、自分は一体何を励みに、何をモチベーションに歩いているんだろう」と自問した。


次の町やロードハウスに辿り着く事を目指し、歩行後にテントで飲むぬるいビール、あるいは夜に飲むコーヒーが毎日の数少ない楽しみでモチベーション。

そして何より早くこの環境から、この国から脱したいと考え歩き続けている。

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延々と続く単調な景色。
こういう変化のない景色が何百キロ、千キロ超に渡って続いているっていうのは確かにすごいけど、まあそれだけで、豪州に来てから感動した事など1度もないし、息を呑む様な鳥肌の立つ様な景色と出会った事などない。

実際にこの環境に身を置いてみれば多分3日で飽きるはず。
ぼくは半日で飽きました。
そしてその後2ヶ月もこのつまらない景色の中を歩き続けている。


いやこれ本当にクソッタレなんですって。
毎朝4時半から12時間も延々と続くこの単調な景色の中を歩き続けるという日々。
何度か緩やかなアップダウンもあったけど、そんな変化は嬉しくない。
楽しみなき日常。何のために歩いているんだろうって何度も自問した。

歩かなきゃ終わらないから歩き続けているけど、テナントクリーク手前で遂にキレてしまい、「もうええわ」とブッシュにテントを張り、翌日も一歩も歩かず。
その後はテナントクリークを経てキャサリンまでまた休みなしで歩き続けたけど、ストレスが半端ない。


そんなストレスは今に始まったことではなくて、アリススプリングスに到着した時、こんな環境から得られるものなどないと思い、まだ半分以上も行程が残っている事を嘆き、もう終わりにしたいなとすでに思っていた。
これがもし豪州大陸単体としての縦断だったら投げ出していたかもしれないけど、地球一周の過程であるので投げ出したくなるのを堪えた。
2009年の上海出発以来、黙々とひたすら歩き続けてきたけどこんな精神状態に陥るのは初めての事だった。

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ここを歩いて得られるものは多くないけど、ダーウィンが目前に迫った今改めて考えてみると、「3千キロに及ぶクソつまらない環境下での歩行に耐える事ができた」なんていうよく分からぬ精神的強さを得られるのかもしれないし、時間が経てばこの自然、ここでの経験に対する考え方も変わってくるかもしれないけど、今はとにかく早く終わらせたい。



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豪州内陸はロードトレインという大型トラックの荷台部分を3~4つ連結させたトラックが走っている。
たまにひどい運転の奴もいるけど、2ヶ月もこの道を歩いているんで、自分の事を何度も見かけているであろうドライバーは対向車がない時はセンターラインをはみ出して走ってくれる。そんな時はありがとうと手を挙げ感謝の気持ちを伝える。

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北上するにつれ、少しずつ景色も変わってきたけど、変化のない景色という点では全く変わらない。

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マタランカ・キャサリン間ではワラビーの轢死体が多かった。
道脇を腹這いに進むワラビーがいた。血は見えなかったけど、もしかしたら車と接触し、足がダメになったのかもしれない。近付くと威嚇された。

Banka Banka 

前方、遥か先に小さな影が見えた。
その大きさから車でない事は明らか。
そのスピードからバイクでない事は明らか。

「もしかしたら」と思い、胸が高鳴る。
そしてさらに進み、その影が大きくなった時、それは確信に変わった。
道路の端をゆっくりと進むサイクリストの姿。しかもその影は2つ。



ダーウィンからアデレードまで豪州縦断中の台湾人。
アリススプリングスからビクトリア州へ走っているという現地人サイクリストはいたけど、大陸縦断系は初めて。

「どこで眠ってるの?」「1日何キロ歩くの?」
そんないくつかの質問に答えたり、10分程立ち話。
そして別れ際に彼らは言った。

「バンカバンカへ行くといいよ。サイクリストは無料でテントを張れたよ」

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長い無補給区間を歩き抜いた先にガソリンスタンドやバー、レストランなどを兼ねたロードハウスが現れ、ここで水の補給をしたり、久々に人と話したり、まさにオアシスの様な存在。


南オーストラリアでは最大250キロ、それ以外にも200キロ、180キロなど、長い無補給区間があり、ロードハウスに辿り着く度に冷たいビールを飲み、祝杯をあげていたのだけど、ノーザンテリトリーに入ってからは頻繁にロードハウスが現れ、無補給区間は短くなり、以前と比べたらかなり楽な環境になった。

ピンバ以降の南オーストラリアのロードハウスは名前や景色など鮮明に覚えているけど、たいした苦労もなく辿り着いたアリススプリングス以降のロードハウスは記憶が薄い。名前すら覚えていないところもあるから。


バンカバンカでは給油はできないみたいだけど、キャラバンパークがある。
水は補給できる環境だろうけど、キャンプ場にお金を払ってテントを張るという事は基本的にはしたくないので寄らないつもりでいたのだが、無料でテントを張らしてくれるのならそれはとてもありがたい。

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この日はバンカバンカまで歩く事に決め、夕方に到着。

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ガソリンスタンドもないしレストランもないし、どうせ客の少ないしょぼいキャンプ場だろうなどと思っていたら、敷地内にギッシリとキャンピングカーが駐車していて、あまりの多さに正直驚いた。
ここは個人所有のオアシス地で、家の敷地を開放している。
一体何の魅力があって、何を求めてここにやって来るのか、当初自分には全く理解できなかったけど、オーナーの人柄なのかなと思う。


「無料で泊まれると聞いたのですが」などとストレートに言いにくいので、「ここにテントを張りたいのですが、いくらですか?」と尋ねてみれば、リヤカーを見たオーナーは「フリー」と言った。

そして「水を飲むか?」とオーナー。
十分な量の水を携帯していたので、その事を伝えれば、「でも冷たい水は持ってないだろ」と言い、ペットボトルに入った冷水を渡してくれた。

暑い中60キロ近く歩いた後に飲む冷水。うまいに決まってる。
ありがとう、オーナー。

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「そこら辺にテントを張りなさい。シャワーとトイレはそこ」

オーナーに案内してもらいテントを張った。
前日にテナントクリークでシャワーを浴びたばかりだったけど、歩行後に汗を流すのはとても気持ちが良かった。

ありがとう、バンカバンカ。

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翌日。
2日連続でサイクリストと遭遇。
オーストラリア1周中のイングランド人ダン。
着てるシャツは汚いし、汗臭い。
しかし汚さと美しさは紙一重とでもいうのか、嫌いじゃない。

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ダンと別れた後、10分くらい遅れてやって来たダンの友達。
名前は忘れた。臭い。

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「君ら臭いからバンカバンカへ行きなさい」

あまりに臭いんでバンカバンカを紹介しておいた。

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