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ALKINIST -あるきにすと- 2013年05月

建徳 

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最後の省である浙江省に入った。

今は中国の地図帳を持っていて、省境を越える度に新たなページをめくってきたけど、浙江省のページには隣接する上海市も記載され、いよいよだなと実感。

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現在は国道320号線を歩行中。
320号線は上海が始点の国道。
1キロごとに設置されているこの石標の数字が上海までの距離である。

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石標に地図帳などで常に上海への距離は把握しているけれど、いざこうして上海への距離標識を目にすれば、熱いものが込み上げてきた。

けど、この上海への距離は間違ってる。
上海の外れならともかく、中心部はさらに60キロは遠い。

横峰 

昨日、一昨日と夜間に降雨。
こんな日にテントでなくて良かったと心から思う。

今朝は濡れた路面にどんよりとした灰色の空。
7日程前までは連日の雨に見舞われていたが、その後一転して酷暑続き。
強い陽射しを浴びながら歩いていると肌寒い雨の日が恋しくも思えるけど、雨が降りそうな空には不安を感じる。

幸い雨は降らず、昼頃から青空が見え、強い陽射しの中を歩いた。

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未舗装区間が約5キロ。
昨夜の雨で地面はぬかるみ最悪な道。


今日は67キロ歩き、横峰へ。
上海への予定歩行日数は残すところ10日。

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今日の宿は今回の中国滞在で最も高い宿。
疲労に足の痛みも少しあり、安い宿を探すために歩き回る気にならなかった。

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朝食は牛肉粉。昼食はバナナ。
途中アイスなどを食べ歩き、夕食はインスタントラーメン。

鷹潭 

連日60キロ超の歩行を続けていたが、7日歩いたところでようやく休みを取れた。
足の疲労がひどく、もう1,2日早く休む事も考えていたけど、そんな時に限ってテント2連泊。

「今日で終わりだ、明日は休みだ」と言い聞かせ、重い足をひきずって鷹潭。
駅前には安宿が密集し、昨日は10軒以上の宿をあたって、安くネット環境のある宿を見つけた。

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今朝は久々に蘭州牛肉拉麺を食す。
ムスリムが経営するこの手の食堂は大きな街にならたいていはあるけど、今回の中国で初の牛肉拉麺。
2009年に中国横断した際はイスラム色が濃くなった峡西省以後はかなりお世話になったけど、どこか懐かしい味だった。


今日はウォルマートへ行ったくらいで、あとはゆっくりリラックス。



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先日は出発前に公安を呼ばれ、パスポートチェック。

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国道を外れ、省道を歩いたけど未舗装の悪路が延々と続いた。

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ぬかるみにはまり、動けなくなったトラックも数台。

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江西省では道脇に捨てられた豚を目にする事がある。

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豚。

衙前 

連日の長距離歩行に足は疲労困憊。
歩行ペースを落としながらも63キロ歩き、闇が迫った頃にようやく到着した小さな町。
地図に載っているこのレベルの町なら基本的に宿はあるのだが、こんな時に限って宿はなかった。


闇に包まれる直前、中国の田舎のとても小さな町で宿を得る事ができないなんて、普通なら絶望するシチュエーションなんだろうけど、慣れや経験というのはすごいもので、全く動じない自分に我ながら感服。
15キロ先の街を目指すか、どこかにテントを張るかを考えながらこの小さな町を去った。

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この数日は酷暑が続き、シャワーを浴びて汗を流したかった。
前日も宿がなく、国道近くの空地にテント泊だった。

しかしさらに3時間も歩けば到着は23時近くになるし、何より疲れていたので畑の脇にテントを張った。
中国ではテントを張るつもりはないので十分な水も食料もない。夕食抜きだった。


腹減った、シャワーを浴びたい、歯を磨く水さえない、雨のせいでマットはカビ臭い。

カザフスタンや豪州はもっと過酷な環境だったのに、2,3週間シャワーを浴びれないなんて常だったのに、この1ヶ月テントを張っていないので随分と府抜けてしまった。


6日、7日と歩き続ければ足に痛みや疲労を感じ、朝から重く感じられたけど、理由はそれだけではなくてテントと宿のベッドという差も大きい。

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先日76キロ歩いて辿り着いたぼろい旅社。

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汚いベッド、汚い布団、汚い枕。
そしてこのトイレットペーパーは何なのか。

清潔ではないけど、それでも熟睡し、疲れを癒す事ができた。

醴陵 

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路地裏に安宿を見つけた。
安いし、悪くなかったので1日休む事に決めた。

今日は朝から1日中雨が降り続け、肌寒かった。
腹の調子も良くなく、休養日にふさわしい1日だった。
腹は昨日食べたパンが原因だろう。変な味がしたし。
それにしても雨が多くうんざりする。

明日は江西省に入り、上海への距離も1000キロを切るだろう。

石亭 

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前日に続き、省道313号線を歩き、石亭という町に到着。
町外れの食堂で昼食をとることにした。


メニューがあれば楽に注文できるけど、そんなものはないので口頭もしくは筆談で注文する事になる。
名前を知っている中華料理は限られるが、チンジャオロースを注文。
しかし発音が悪く、伝わらず。この前は通じたのに。

そんな時は筆談となるが、青と肉は分かるけど、漢字で青椒肉絲と書く事ができないのであきらめる。

ならばと炒面を口頭、筆談で伝えるが、「没有(ない)」とあっさり撃沈。
マーボー豆腐のマーボーも漢字で書けないし、魚香茄子など魚香系、土豆肉炒など、選択肢は狭まっていき、回鍋肉と言ってみたら「有」との答えも予算の3倍なので却下。

結局10元で食べれるものと注文。
おばちゃんが何を言っているのか全く分からなかったけど、注文する事ができた。

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紙がなく、手のひらに書き続けたのでこんな状態に。

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10元のものと伝え、何が出てくるのか分からなかったけど、卵とピーマンの炒めものが出てきた。ご飯は食べ放題だし、十分過ぎる量。

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その後はまさかの回鍋肉の登場。
「金は要らないから食え」と言われたけど、すでに満腹なのですが。
「ビールも飲め」と言われた。まだ歩かないといけないのですと思いつつも誘惑に負けて飲んでしまう。

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少し多めにお金を置いていこうと思ったけど「そんなもの受け取れねーよ」と店主。
せめて10元だけでもと渡そうとしたけど「受け取れねー受け取れねー」の一点張り。
そういえば2009年も同じ事が何度かあったな。

彼らに対しできる事は何もなくて、中国語で書かれた自分についての記事を読んでもらい、感謝の言葉を書き残してきたのみ。

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さらに歩いた所で食堂に居合わせたこちらの方が何やらよく分からぬ中国語で話しかけてきて、100元札を渡してきた。
「お金はあるので大丈夫」と財布を見せ、丁重に断るも、「靴がぼろいから新しいのを買いなさい」と結局は100元札を握らされていた。
100元って日本円だと1600円くらいだけど、中国では1万円くらいの感覚。

謝謝としか言えず。


飯をタダで食えたとか、お金をもらったとか、そんな事はどうでも良くて、本当に彼らの気持ちがありがたくて、優しさが心に沁みた。



人にやさしくされた時 自分の小ささを知りました


そんな歌詞を思い出す。

中国人に対しアホとかクソとか思う事が多々あるけど、そんな事を思う自分を恥じたり、いやでもアホでクソな奴がいるのは確かだなと思ったり。


今朝、道脇におばあちゃんが座っていて、なぜか半ケツで、そこから変な液体が流れていたけど、そんな時にトイレットペーパーを差し出せる人間になろうと思います。

なんて事を考え、感謝しながら歩くこと30キロ。
目指していた街は目前という所で雨が降り始めた。
街は近いし、レインウェアの着用は面倒なので雨に打たれ歩いていたら、前方に車が停車。

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食堂の店主で傘とビールを渡してくれた。


中国でこういう情に厚い人達と出会い、心に響くものがある。
期待していなかった分余計に。最悪に近い関係の今だから余計に。

雷打石 

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前日は激しい雨に見舞われ、全てが濡れた。
夜通し扇風機を回し、靴を乾かした。

就寝前に外を見れば激しく雨が降っていて不安を感じたが、一夜明ければ雨は止み、曇り空。
いつ雨が降り始めてもおかしくない空模様だったけど、出発時より雨具を着用し、靴を濡らしながら歩き始めるのと、そうでないのとでは気分的に全く違う。

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しかし少し歩けばこんな状態。

前日の雨のみなのか、ここ数日降り続けていたものなのかは分からないけど、坂の上から下へと大量の雨水が流れ、道路は一部水没。
現在の靴の状態で突っ込めば悲惨な事になるのは明らかなので裸足でここは越えた。

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道路沿いの家にも浸水していたり、こんな感じで家の前に大きな池ができていた。

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歩行距離を短縮できるので、夕方からは国道を外れ、省道を歩く事にした。

道路幅は狭くなったが、交通量も半減、不快なクラクションも少なくなった。
快適な舗装路からデコボコ悪路、道なりに進めばよかった国道と違い、道も分かりづらい。

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メリットもデメリットもそれぞれあるけど、この小さな省道沿いの町や集落を見ながら歩き抜けるのは興味深くもあった。


何があるという訳ではない。
何もない所で警戒心と興味が入り混じったような視線を浴びる事も多いけど、自分が求めている場所はこの何もない、これまで外国人がここを訪れた事はあるのだろうかと思えるような辺鄙な所なのです。

何をする訳でもない。
ただ歩いて通り過ぎるだけ。



町全体が黒っぽい石炭の町があって、姉妹と思われる2人の女の子とすれ違った。
この子達はこの町から出て行く日はあるのだろうかなどと、余計なおせっかいであるけど考えてみる。
名前も生い立ちも知らないし、会話をした訳でもない。
ただすれ違っただけだが、たまたまここを通り過ぎた自分とここで暮らす彼女達の人生とがクロスした事が不思議なものに思えた。

人生なんてそんな巡り合わせの連続なのだが、この4年半の巡り合せは特に貴重なものに思える。上海が目前に迫った今、そんなことを考えた。

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目の前に寂れたアパートの様な建物が現れた。

カナダを歩いていた時、ふと足を止め、周囲を見渡し、3千メートル級の山々に囲まれているというシチュエーションに「とんでもない所にいるな」と思い、深く感動。
そしてこの現実が非現実に変わっていくであろう事に寂しさも感じたものだ。

カナダの山々の様に美しい訳ではなく、何もない殺風景な景色ではあるけど、ここでもあの時の様に足を止め、「何でこんな所にいるんだろうか」と思う。この先何度も思い出す景色になりそうだ。