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ALKINIST -あるきにすと- こんな毎日

こんな毎日 

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歩行再開後は街を避け、小さな町や村が点在する山中、赤や黄色に染まった山の中をひたすら歩いている。

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霧深い朝も、

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雨の日も、

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長い上り坂も、

ただひたすら歩き続けている。


最初の数日こそ、昼を過ぎてからの疲労に苦しみ、全くペースが上がらなかったのだけど、ユーラシア大陸を歩き抜いた足なだけあって、いつものペースを取り戻すのにそれ程時間はかからず、すぐにいつも通りのペースに戻った。
自分の足はどうにでもできるけど、さすがに日照時間を延ばすなんて事はできるはずもなく、春や夏に比べ早くなっていく日没時刻に合わせ、歩行を終える毎日。


毎日、陽が西に傾くにつれ、今晩のテント設営について考え始める。
これはアメリカに限らず、ユーラシアでもずっと同じ。

「歩行中何を考えているのか」と尋ねられる事が何度かあるのだけど、そんなたいした事を日々考えているわけではなく、いつも答えに困り、んーと色々と思考を巡らすのだが、なかなか答える事ができない。
一人でしりとりをしているとか、絶対に答えたくない。
思考をめぐらせた結果、「日没が近付くにつれ前のテント設営、寝床の確保にいつも頭を悩ませる」と答えるのだが、やはりこれに尽きるなと今は思う。

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山の中ならテントを設営するのも余裕だと当初は考えていたけど、このアメリカの田舎の山って私有地がとても多く、「POSTED」と立ち入りを禁止する看板がいたる所に立てられている。
アジアや欧州なら文字を読めない事をいい事に勝手に侵入し、山や畑にテントを張り放題だったけど、さすがにアメリカの立ち入り禁止区域でテントを張ろうとは思えないのです。
これまで堂々と目立つ所にテントを設営する事もあったけど、これもまた絶対に避けたい。

銃社会アメリカ。
大袈裟だけど、どんな些細な事であっても揉め事を起こさず、慎重に歩きたいなと。
自分の身は自分で守るしかないのです。
こんな事は常々頭の中に入れておくべき事だけど、初心に帰るというのか、アメリカへ来て、今一度、より強くそんな事を思う。

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テント設営地が見つからず、暗くなるまで歩いていると、声をかけてきたおばちゃん。
彼女に「ここにテントを張っても大丈夫?」と立ち入り禁止の看板の先を指差し、尋ねてみる。
「Maybe」
多分という曖昧な返答だったけど、こんな返答でも心強い。

また別の日は「NO HUNTING」の看板を「YES CAMPING」と勝手に解釈してみたり、どうしようもなく立ち入り禁止の茂みの中にテントを設営したり。

ちょうど日没頃、嫌なタイミングで到着したHuncockという町。
町の手前で歩行を終えたく、テント設営に適した場所を探すも見つからず、町へ入ってしまった。どんどんと暗くなっていく中、テント設営地を探し、歩き続けるのは避けたいところ。
久々の窮地であったけど、この日3度目の遭遇、差し入れを持ってやって来たカトリーナにテント設営地について尋ねてみると、

「この先に橋があるからその下にテントを張りなさい」と彼女。
「そこは安全なの?」「イエス」
「でも」と彼女は続け、「若者に気をつけなさい」と言った。

気をつけなさいと言われても、どう気をつければよいのか?
安全なのか危ないのかよく分からぬ答えだったけど、ここにテントを張る以外に選択肢などなく、

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デラウェア川に架かる橋の下にテントを張る。
熊の心配のない場所だったけど、万一に備え、ベアスプレーを枕元に置いて眠る。
しかしながら、幸いな事に夏ならまだしも、こんな寒空の下、ビール瓶を片手に橋の下でタバコをふかすような気丈な不良少年などおらず、無事に朝を迎える事ができた。


「熊よ出てくるな、無事に朝を迎えたい」

そんな事を祈るのも1度や2度ではない。
熊の事は別にしても、ユーラシアでも何度も祈った。
祈りが通じ、熊にも人にも襲われず無事に迎える朝。
色々な事に感謝して、また歩き始めて、日没前に頭を悩ませて、長い夜を迎える。
こんな毎日です。