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ALKINIST -あるきにすと- Port Hope

Port Hope 

目を覚ます度にパラパラとテントを叩く雨音にうんざりさせられる。


午前5時30分。
オタワを出発以来、毎日この時間に起きている。
シュラフに入ったまま手を上に伸ばし、テントが凍り付いていないかチェックする事がいつの間にか日課となった。一晩中降り続けた雨でテントはびしょ濡れ。

毎日の大一番はシュラフから出る時で、「あと5分」なんて思う事もしばしば。というより毎朝。決意を固めた後はブルブルと震えながらシュラフから脱し、レインウェアを着用、出発準備を始める。
湯を沸かしてコーヒーを飲んでなんて事はしない。
寒くてそんな気にならないし、何より今の時期、歩ける時間、距離は限られているのだ。
夏場は55~60キロ歩く毎日だったけど、日没ギリギリまで歩いて45キロ。
少しでも歩行距離を稼ぐべく、さっさと歩いてしまいたい。

いつもなら月明かりを頼りにテントを片付けるのだけど、雲に覆われた空の下は闇。
全く何も見えず、ヘッドライトを点灯させ、テントを片付ける。
歩き始めるのは6時30分頃、まだ周囲は闇で明るくなるまでまだ1時間はかかる。
周囲に家はなく、時折通過する車のヘッドライトだけが唯一の明かりだった。

雨に打たれ続ければ、靴の中までも雨水が浸透し、まだ歩き始めたばかりだというのにソックスはすでにびしょ濡れで、グローブも同様。
テントもシュラフも濡れているし、今夜はどう過ごせば良いのか。
依然として激しい雨が降り続けていたけど、足を止めなかったのはもうすでにびしょ濡れだし、ここで足を止めたところでどうしようもなかったから。何より足を止める場所、雨をしのぐ場所すらなかったけど。

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歩行開始から3時間ほどで雨は雪に変わり、あっという間に周囲を白く染めた。
激しい吹雪で視界は悪く、道路を走る車からは思い切り雪を浴びせられ、安全確保のために道脇を歩くも雪上の歩行はいつも以上に力が必要で、疲労困憊。

最も心配だったのは凍傷。
気温はそこまで下がってはいなかったけど、濡れたグローブにソックスと凍傷を負う条件は揃っていた。ブルガリアでの歩行も吹雪の中で、あの時の事が脳裏を過ぎる。

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吹雪の中を2時間歩き、道脇に作業小屋を見つけたので避難。
荷台に積もった雪を払い、靴やソックス、グローブを新しいものに替えようとしていると、この作業小屋の主がやって来て、家へ招いてくれた。

暖かい家に招かれ、濡れた靴、ソックスを脱ぐ。
レインジャケットを脱げば、その下のジャケット、フリースまで濡れていた。
渡された熱いコーヒーの入ったカップを両手で覆い、指を温め、コーヒーを啜り、冷え切った体を温めた。

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この吹雪の中から手を差し伸べてくれたのはピーター、イボンヌ夫妻。
ピーターはオランダからの移民、イボンヌは英国系。

さすがにこの日はモーテルに滞在しようと思っていたのだけど、彼らは温かく美味しい食事を与えてくれ、

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さらには寝床まで提供してくれた。


雪に山に無人地帯、
試練を与えてくれるのはいつも自然、
救いの手を差し伸べてくれるのはいつも人です。

試練と人の優しさに感謝です。