ブックマーク
ALKINIST -あるきにすと- 運命

運命 

それは雨の日の事だった。

前方に傘をさした人影、ブルーシートに覆われたものが見えた時、「彼に違いない」と確信。道路を横切って彼の元へ向かった。


「ぼくはあなたの事を知っている。お会いできて嬉しいです」


やや興奮気味に握手の手を差し伸べた。
彼もまた力強く握り返してくれた。


IMGP2104_R.jpg

日本を出発する前か、出発した後か、確かでないのだけど、彼の事を知ったのはどこかの通信社が配信した記事。
「世界各国を10年歩いている男」みたいな感じで紹介されていたと思う。


「今サンダーベイへ向かって歩いている男がいるよ。彼はもう11年も歩いているんだ」


サンダーベイ滞在中、西から来たサイクリストから教えてもらったこの情報。
あの記事を読んで以来、彼の事を思い出す事などなかったのだけど、彼がカナダ・モントリオール出身である事など、曖昧な記憶を照合。「彼に違いない」と思った。

IMGP2106_R.jpg

やはり彼はぼくが読んだ記事の男でJean Béliveau。
現在バンクーバーからモントリオールの自宅へ帰宅中なのだとか。
11年という長い旅はもうすぐ終わる。

「まあゆっくりと食べながら話しましょう」とスニッカーズを手渡せば、
「アリガトウ」と日本語で返事。
ちなみに彼は青森から鹿児島まで2ヵ月半かけて歩いていたりする。

IMGP2105_R.jpg

彼の愛車はベビーカー。
11年で3台目らしい。

これまでの旅の話、今後の話など、30分は立ち話。
いつの間にか雨も止んでいた。

IMGP2112_R.jpg

再びガッチリと固い握手をし、二人それぞれの旅路へ。
後ろを振り返れば、彼もこちらを振り返っていて、手を大きく振った。


連日報道される膨大な量のニュースの中から彼の記事を読み、当初訪れる事のなかった北米で彼と出会い、この広い地球上で2つの旅が交差した事に、偶然とかそんなものではなく、引き寄せられたというか、運命的なものを感じた。
おっさん相手に運命の人だなんて言う気はないけど。


10月16日、彼の11年の旅が終わる。
同じ日にぼくの北米での日々も終わる。