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ALKINIST -あるきにすと- Raining

Raining 

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朝焼けがとても美しくて楽しい1日になる予感がした。


しかしそんな予感も束の間、進行方向はどんよりとした灰色の雲に覆われ、3時間後には強い雨が降り始めた。
その時ちょうど湖畔の駐車場にいて、レインウェアを取り出していたところ、どこからやって来たかすら分からない赤いパジャマ姿のおばちゃんがいきなり現れて、「コーヒーを飲まないか?ブレックファストは食べたのか?」と話しかけてきた。
こちらは急いでレインウェアを着ようとしているのに、なんとものんびりとした申し出だと思った。

そんな事よりも、おばちゃん、この雨の中、あんたどこから現れたのだ。
「カモン」というおばちゃんの後を追いながら、「一体どこへ連れて行かれるのだ」と少々不安も感じたのだけど、

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おばちゃんが連れて行った先は湖畔に停められたキャンピングカー。

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カルガリー方面へ向かっているというドグ、ジュメイラ夫妻、そして2匹の犬。
昨日歩いている姿を見たのだとか。
すぐに熱いコーヒーを入れてくれ、トースト、さらには卵をフライパンで焼いてくれ朝食。
冷蔵庫も電子レンジもあるし、生活に必要なものはたいてい揃っていた。

「ごちそうさまでした。本当にありがとう」

いつまでも雨宿りというわけにもいかないし、依然強い雨ではあったけど、歩行を再開する。



濡れるのは嫌いだ。だから雨は嫌いだ。
でも雨の中、サイクリストと遭遇するのは好きだったりする。

雨という悲惨で最悪な状況。
そんな中、自分以外の誰かが歩き、走っているとしたら悲惨な経験の共有をする同士であり、彼らと出会えば改めて頑張ろうと思うし、気持ちも楽になる。

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この日悲惨な雨の経験を共有したマイク。
後方から6人くらいの同士がやって来ると教えてくれた。
結局6人どころでなく、この日すれ違ったサイクリストは9人だったけど。


何人かのサイクリストとすれ違い、また前方にサイクリストらしき人影が見えた。
この時ぼくは延々と降り続ける激しく冷たい雨に顔を歪めていたに違いない。

前方からやって来たサイクリストはまだ若い女性で、一瞬自分の前で止まり、「Good luck」と声をかけ、彼女の行動食を手渡してくれた。

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ほんの一瞬の事。
「Thank you, you too.」と返す事しかできず、写真どころか名前さえも聞けないまま、遠ざかっていく彼女の背中を見送った。

きれいな笑顔で、「グッドラーック」と楽しそうに半音上げる感じで声をかけてきた彼女。
この悲惨な雨の中、前向きな気分にさせてくれ、良い1日だったと思えたのは彼女のおかげです。