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ALKINIST -あるきにすと- サンダーストーム

サンダーストーム 

最近は天候に恵まれているなと青空の下で思ったのは昼過ぎのこと。

しかし西へ進むにつれ、上空に雲が目立ち始め、前方の空はどんよりなんてものではない不吉な真っ黒な雲、その中を何度も稲妻が切り裂いた。

この後歩いてもあと1時間程度、歩行中もしくは夜中に雨に見舞われるだろうと覚悟を決める。
ちょうど小さな村を通過し、どこかに屋根のあるテントを張れそうな所はないかと目を凝らすが何もない。ガソリンスタンドやカフェなど雨宿りできる所さえなく、道沿いにつぶれたガソリンスタンドが1軒あるだけだった。

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その少し先でのんきに雨雲の下へ突入する写真を撮って遊んでいる時だった。

1台の車が停車し、「サンダーストームだ!村へ引き返せ!」とドライバー。
親指と人差し指で丸を作り、「こんなのが降ってくるぞ」と彼は言った。

彼の言う「こんなの」が何なのかよく分からなかったけど、同じ様に丸を作り、「こんなのが降ってくるのですか?」と問い返してみた。
助手席の女性は「そう、こんなのが降ってくるから早く引き返しなさい」と言った。
「こんなの」とはどんなのなのか相変わらずよく分からなかったけど、どうせ大粒の雨なんだろうと思い、「村へ戻ります」と彼らの助言に従う事にした。

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村までは1キロ程、10分もあれば戻れる距離なのだけど、強風にあおられた真っ黒な雲が上空を覆い、突然真っ暗になった。
やばいなこれと思った途端、激しいなんてものではない雨が降り始め、あっという間にびしょ濡れになった。

なんとか村に着いたはいいけど、この村に雨風をしのげるような所はなくて、つぶれたガソリンスタンドの壁に隠れてみたけどそんな事をしても全く意味はなく、「どうすりゃいいんだ」と思いながら数軒の家が並んだ方へ向かう。
ガレージのようなものがあればしばらくの間屋根下に入りたかったけど、どこも扉が閉ざされて期待外れ。その間も延々と降り続ける雨に打たれ、何もかもが濡れていた。

やばい、やばいと思っていると追い打ちをかけるように、あのドライバーが親指と人差し指で作った丸「こんなの」が降ってきた。飴玉くらいの大きさのヒョウが上空からガンガン降ってきた。
幸い体に当たったところでたいした痛みを感じるわけではないけど、雨にヒョウに強風、雷からとにかく逃れたかった。

1軒の家の入口上に屋根があるのが見えたので、駆け込んでインターフォンを鳴らした。
出てきた女性に「天候が落ち着くまで屋根下に避難させてほしい」と伝えると、彼女は「中へ入りなさい」と言ってくれた。
しかし何もかもが濡れ、シャツやズボンからはポタポタと雨雫がしたたっている状況。
「濡れているので屋根下でけっこうです」と一度は断ったけど、やはり「入りなさい」とタオルを持ってきてくれた彼女の厚意に甘える事にした。

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外を見れば緑色の芝上に真っ白なヒョウが無数に転がっていた。

安全な屋根下で激しく降り続ける雨とヒョウを見ながら思い出したのはカザフスタンの無人地帯で激しい雨に見舞われた時の事。
草原に地平線、サスカチュワンの景色はカザフスタンの様だと思ってはいたけど、あの時と同じ経験をする事になるとは思ってもいなかった。
今回は逃げ場があって良かったけど、あのドライバーの助言なしに歩き続けていたらと思うとぞっとする。

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そういえばカザフスタンで最も好きだったもの、最も大切な思い出は草原の民との出会いだった。あの過酷な自然の中、何度も手を差し伸べてくれたカザフ人達。

サスカチュワンの草原の民も同じ様に親切でした。
突然雨宿りをしに来た上に、泊めさせていただいて何てお礼を言ったらよいか。