ブックマーク
ALKINIST -あるきにすと- 世界で最も美しい道 4

世界で最も美しい道 4 

IMGP4248_R.jpg

交通量の少ない朝の時間が好きだった。
約300メートルの上り、峠越えから始まった最終日。
ひんやりとした澄んだ空気、霧がかった山々、呼吸を乱し早くなった鼓動、小鳥のさえずり、とても静かで、この時間、空間を独占しているかの様で贅沢な時間に思えた。

IMGP4251_R.jpg

2つ目の峠、Bow Passは約2070メートル。
所詮は多機能腕時計の高度計、許容範囲内の誤差。
最初の上りと比べればはるかに楽なものであった。

IMGP4254_R.jpg

レイクルイーズはもう目の前。

IMGP4261_R.jpg

霧と山というのも悪くはなかったけど、やはり青空の下でこの美しい風景を堪能したかった。

IMGP4166_R.jpg

昼食はこんな感じ。

IMGP4268_R.jpg

徒歩でジャスパーを目指すというフランス人カップルとすれ違った。

「ジャスパーから何日かかった?」「5日目」

お互い雨にうんざりしていたし、日中の気温も5度と寒かった。彼らは寡黙だったし、会話が全く弾まず、正面から写真を撮る機会を逃したので後姿だけ。
霧深い3000メートルの山々の中に入っていく小さな背中。
自然の大きさと人間の小ささを感じた。
自分の後姿もこんな感じなのかな。

IMGP4274_R.jpg
IMGP4274-1.jpg

「日本ノ皆サン、コンニチハ」

あいにくの天候で景色を楽しむ事ができず、冷たい雨にもうんざりしていた時に現れてくれた熊。
彼なりのサービスだったのだろうか。
ありがとう熊!

IMGP4279_R.jpg

ちなみにリヤカーとの距離はこんな感じ。
道脇の黒いのが熊。

「7メートルという近距離で熊と遭遇した際、まず最初に何を手に取ったのか全く記憶にない」

そんな事を前夜に書き記したのだけど、この時恐らく熊との距離は15メートル。
熊に気付いた時は驚いたし、じっとこちらの様子をうかがう熊にわずかながら恐怖を感じた。

ウィニペグの宿の冷蔵庫に「熊と遭遇した際の注意事項」みたいなものが貼られていて、「走らない、背を向けない、刺激しない(驚かさない)、少しずつゆっくりと後退する」という感じだったと思う。
これを見た時は、そんな冷静に対処できるものかと思ったけれど、いざ熊と対峙してみたら、これらの事を思い出し、背を向けないようゆっくりとまずはベアスプレーを手にした。そしてカメラ。

ぼくはまともな人間ではないけど、さすがに熊と遭遇したらまずはカメラではなく、最低限自分の身を守る事を考えるのだと、そんな事を知った。

IMGP4292_R.jpg

3日目にも出会ったカナダ人夫婦。
アイスフィールドパークウェイ縦断ではなく、日ごとに区切ってサイクリングを楽しんでいるよう。

「歩行中何を考えてるんだ?」とご主人。
これまで何度も聞かれた事だけど、別にたいした事を考えているわけではないので返答が難しい。でもこの時はこう答えた。

「今は熊を探しながら歩いています」


「レイクルイーズまであと18キロよ」と奥さん。

その後3時間ほど歩き、アイスフィールドパークウェイは終わった。



「アイスフィールドパークウェイは世界で最も美しい道なのか?」

とても楽しかったし、自然を満喫したけれど、そう尋ねられたら「ノー」と答える。
だって「イエス」と答えたら、カザフスタンの無人地帯もアドリア海沿いの道もアイスフィールドパークウェイ以下となってしまうし、それらに優劣をつける事はできないから。
それに「イエス」と答えられるほど、まだ多くのものを見ていないし、歩いていないのだ。

ただ「世界で最も美しい道の一つ」であるのは間違いない。