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ALKINIST -あるきにすと- 横断する人だと思ったらホームレスだった

横断する人だと思ったらホームレスだった 

ウィニペグ近郊でルート1を外れ、ルート16を歩いて以来遭遇するサイクリストは激減。
それは単純にバンクーバー・カルガリー・ウィニペグと結ぶルート1がメジャールートだから。

念願のアイスフィールドパークウェイを歩き抜き、レイクルイーズからバンフへの往復、さらにはそこから西への道、久々のルート1を歩くもサイクリストは皆無。
朝夕は冷え込み、日照時間も短くなり、もうカナダ横断サイクリングシーズンは終わってしまったのだなと一人納得する。

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グレーシャー国立公園を抜け、Revelstokeへの距離標識が現れた。
残り50キロ、改めてその距離を確認、カメラを向けてみる。

するとファインダー越しに前方からやって来る人影が見えた。
けっこうな量の荷物も積んでいて、大陸横断サイクリストであると確信。
ただ対向車線だったので、手を上げて挨拶する事しかできず。
彼もまた手を上げて応え、走り去っていった。


久々のサイクリストだっただけにできれば話したかったなと思い、あの大量に積み込んだ荷物を見て面白そうな奴だったなと思っていると、背中を向け走っていた彼はUターンしてこちらへやって来た。

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カナダ人ポール。

「東海岸を目指しているの」と尋ねれば「I don't know」
どこを目指しているか分からないと言いやがる。

「どこから走っているの」と尋ねれば「I don't know」
どこから走っているか分からないと言いやがる。


彼は言った。

「アイアムホームレス」

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よく分かんないけどホームレスなんだって。
ホームレスだけど、予備タイヤとかテントとかは持っているらしい。

「アーユーホームレス」と尋ねられたので「ノー」と否定しといたけど、彼がホームレスならぼくも半分ホームレスみたいなものかも。家ないし。

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彼の自転車の前部にはネズミのぬいぐるみがあって、「道に落ちてたんだ」と教えてくれた。
「へー道に落ちてたんだー、すごいねー」何がすごいのかよく分からないけど適当に返すと、「うん、これも道に落ちてたんだ」と彼は自分の服やズボンを指差した。


「食べ物はあるの、この先100キロ何もないよ」と言うと、豆の缶詰を2缶見せてくれ、「お前も食料持ってんの?これやるよ」と言った。いらないので断ったけど。

ぼくはこの日ドライバーからりんごなどをもらっていたので彼にお裾分けしようとりんごを2つ渡したのだけど、彼は頑なに受け取るのを拒否した。
同情されるのが嫌なのかもしれないし、プライド高きホームレスサイクリストなのかもしれない。

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「交換だ」と言って、2つのリンゴと引き換えに豆の缶詰を渡された。

「いやこれは君の貴重な食料だから受け取れない」と受け取りを必死に拒否したんだけど、結局豆缶を握らされた。
特に豆が好きなわけではないし、わざわざ缶詰の冷たい豆を食べたいとは思わない。美味しそうじゃないし、ホントこれいらないんだけど。

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「気をつけてね」

互いにそんな言葉をかけ合い、交換したばかりのリンゴをかじりながら彼は東へ向け走っていった。
しかしこれ普通のサイクリストの後姿じゃないですよね。

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その後しばらく歩いて歩行を終え、いつもの様に食料を木に吊るす。
彼と交換した豆缶は熊にあげてもいいやと思い、下に置いたんだけど翌朝もそのまま残っていた。



昨夜はテントの中で色々と考えた。


この若さでなぜホームレスなの?
もっと頑張れるんじゃないの?
両親は何て言ってるの?


彼に聞かなきゃ分からない事ばかりだけど、英語をろくに話せないぼくが仕事を得る事ができたのに、彼にできないはずがないだろとそんな事を思った。
そして彼の目指す先がどこなのか分からないけど、旅の安全と成功、そしてその後ホームレス生活が終わればいいなと願った。




そして今日。
いつもの様に歩いていると対向車線から声をかけられた。

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ポール現る。

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空き缶を集めていたらしい。
色々と教えてくれ、1缶10セントで売れるらしい。
一瞬だけど、1缶10セントなら悪くないななんて考えてしまった。

Revelstokeが好きとの事で、とりあえず今日は空き缶を売りに戻るらしい。
野宿場所についてもアドバイスしてくれた。
アドバイスっていうか「どこでも寝れる」だって。

「See you」って言って別れたけど、また会えるのでしょうか?
そして彼からもらった豆缶はどうしようか。