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ALKINIST -あるきにすと- 北米最後の難所

北米最後の難所 

西からやって来たサイクリストや声をかけてきた現地人、足を止めて彼らと話す事数え切れず。そんな時、こちらからこの先の道について尋ねる事はない。

「強烈な上り坂がある」なんて聞けばその瞬間からうんざりとするし、「上りはない」と教えられていたにも関わらず上り坂が現れればこれもまたうんざり。
この先何があるのか知らないというのが最も幸せな事だと思う。
人生と同じでこの先何があるのか、何が起こるのか分からない方が面白いし。


しかし残念ながらカムループスの先で出会ったカナダ人によってこの先Lillooet-Pemberton間に山道がある事を知らされていた。
彼曰く「とてもハードで、200メートルから1200メートルまで上り、その後300メートルまで下り、またウィスラーまで上るのだ」とか。

これを聞いた瞬間から少しうんざり。
ルート変更をする事も考えたけど、最後の最後、この山道から逃げるのもとても嫌な事で予定通りルート99を進んだ。

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Cache CreekからLillooetまでどんどん下っていく。
この谷の道も景色は良かったけど、この後1200メートルまで上る事らしいので「これ以上下るな下るな」と思いながら歩いた。

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Cache Creekから86キロ、Lillooetが見えた。
この辺り標高は200メートルを割っていた。

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ルートから少し外れるので町には入らず、ガソリンスタンドでコーヒーを飲み、水・食料を補給する。

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この先Pembertonまで100キロ何もないのだとか。
広大なカナダではよくある事。
今後2日間食料の補給ができないという事で不便といえば不便だけど、こういう環境は決して嫌いじゃない。日本では経験できないし。

本当にこの先上り坂があるのか店員に聞こうと思ったけどやめた。
本当にあるんだろうけど、「ある」と言われるのは、ある事を再確認するのは嫌だったから。

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ガソリンスタンドを出てしばらく歩けば、やっぱりあった。
米国人サイクリストと少し話し、彼の背中を見送った後、上り坂を歩き始めた。

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初日は200メートルから700メートルまで上昇。
アップダウンは多いし、急勾配。何度も足を止めながら歩いた。
動けなくなる程ではなかったのでアイスフィールドパークウェイの1つ目の峠の方がきつかったと思うし、ユーラシアでもこれよりきつい事は何度もあったのだけど、でもやっぱりきついものはきつい。

バンクーバーは目前なのに、バンクーバーへ至るルートはここだけじゃないのに、なぜこんなきつい上りを歩くのかと自問。
言い訳とか足を止める口実とか考える暇があるならもがこうと自答。

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歩行終了。
テントを張る前にうんこをする事にした。
出し終わってお尻を拭いていると、20メートル離れたリヤカー背後の林がガサガサと揺れた。もしやと思ったけど、そのもしやで、ブラックベアが林から顔を出した。

ベアスプレーは手元になく、あるのはトイレットペーパーのみ。こっちに来たらどうするべきかと思考を巡らす。
ただあまり大きくなかったし、道路も近く5分に1台くらいは車も通るし大丈夫だろうと、こちらからゆっくり近付いてみたのだが、逃げられた。
多分食料の匂いを嗅いでやって来たのだと思う。
テントを先に張っていれば、その最中に近距離で鉢合わせしていただろうし、先にうんこで良かったと思う。

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さすがに熊と遭遇した場所にテントは張りたくなく移動する。
1.5キロ先にレクリエーションサイトがあり、テントも張れそうだったので設営。
いずれにしても熊の生息場所に変わりはないのだが。
しかし本当に熊が多いです。何度も遭遇しているうちに恐怖心がなくなった。

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2日目は1200メートルまで上ったものの、勾配はきつくなく余裕。
結局Lillooetから1000メートルの上りだった。

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こんな景色とか、

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彼らと出会えたし、「歩いてきて良かったな」と上りを終えた今は思う。
上ってる最中はそんな事を思う余裕はないけど。

彼らはモントリオールからここまで2週間なのだとか。

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こちらのご夫婦は米国在住のフォトグラファー。
リヤカーに貼られたブルガリアステッカーを見て、「ブルガリア出身なのだよ」と彼ら。
キャンピングカーで旅行中の彼らからコーヒーをごちそうになり、30分ほど足を止めた。
「ブラゴダリア」と彼らの母国語でお礼を伝えると驚き、喜んでくれた。

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最後は1000メートル超、急勾配の下り坂。
こちら側からの上りでなくて本当に良かった。
この坂はやばかった。下り終えた後は足でなく腕にものすごい疲労を感じた。

上りもきついけど、下りも決して楽ではない。フラットな道を唯一好む。
下り坂、あるいは追い風の時、ペダルを漕がなくても進める自転車と違い、常に地に足をつけて進む。徒歩って究極の人力だと思います。