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ALKINIST -あるきにすと- Barrow Creek

Barrow Creek 

前方約500メートルのところに5人のアボリジニが現れた。
道路沿いに住居は見られなかったけど、彼らが出てきた所に小道があり、アボリジニ居住区近くにに立てられているアルコールの持込を禁止する看板もあったので、この辺りに住むアボリジニなのだと思う。
見た感じ10代から20代前半という感じ。

分別のある大人という年でもなく、興味本位に絡まれたら面倒だなとか、彼らの前を歩けば荷台の荷物に気を使わないといけないなとか考え、一定の距離を置いて歩こうと思ったけど、手ぶらの彼らは意外と早く、あえて歩行ペースを遅らせる必要もなく、常に一定の距離をとって歩く事ができた。


「こいつらどこへ行くんだ」とこちらが思うように、彼らも「何だこいつ」という感じで何度かこちらを振り返った。
鳥に向かって石を投げたり、時折ブッシュの中へ入っていったり、じゃれあったり、周囲に何もないような一本道を進む彼らを見て、これが彼らにとっての日常なのだろうかと考えた。

しかし彼らがどこへ向かっているのかは分からないまま。

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最初は近くの集落へでも行くのだろうと思っていたけど、1時間、2時間と時間はどんどんと過ぎていく。
3時間ほど経ったところでぼくは昼食をとる事にした。

彼らは引き続き歩いていたので、昼食後しばらくは見えなくなったのだけど、再び現れ次第に大きくなっていった彼らの背中は5から3に減っていた。
多分ヒッチハイクをしたのだろう。この3人もまたヒッチハイクを試みてはいたけど全く車は止まらなかった。


3人のうちの先頭を行くアボリジニは元気なのだが、残りの2人は次第にペースが落ち始め、彼らがハイウェイに現れてから5時間半、ようやく彼らの背中を捕らえた。

手ぶらの彼らが水や食料を持っていない事は明らかだった。
この日はそれ程暑くはなかったけど、彼らが水を欲しているに違いないと思った。

確実に自分よりは土地勘もある彼ら。
バロークリークまでどれだけの距離があって、水、食料が必要かなんてよく分かっているだろうし、そんな彼らに何か与える義理もないけど、この半日共に同じ道を歩いた同志なのである。
英語が話せるのか分からないし、こちらも彼らの言葉を話せるわけなく、こちらを振り返った彼らに「水はいるか?」と英語で問いかけ、水を飲むジェスチャー、そしてボトルを見せた。

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こちらに向かってきた1人の若者に水を渡す。

「食べ物は?腹減ってる?」

同じように言葉とジェスチャーで尋ねてみる。
「えっくれんの?」という驚いた表情が印象的だった。頷いたので、食料袋からビスケットを取り出し渡した。
「どこへ向かってるの?」と尋ねてみると「バロークリーク」と答えた。
この先10キロの所にある場所だ。

10代半ばくらいか。考えていたより若かった。
そして彼らの目の前に立って分かった事。
彼らは裸足でした。

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裸足で5時間半、25キロ超を歩いた。
時には石が転がっていたり、棘がある植物も生えていて、最悪毒蛇もいるであろうブッシュを歩いていた。


その後しばらくして彼らはヒッチハイク成功。
彼らに救いの手を差し伸べたのはやはりアボリジニだった。

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バロークリーク手前で3人のアボリジニを助けた車とすれ違った。
その際、クラクションが鳴らされ、運転席から手が振られた。
彼らの仲間に手を差し伸べた事への感謝か、あるいはここまで歩いてきた事への労いなのか、果たして意味があるのか知る由もないけれど、少しだけ心が通った気がした。