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ALKINIST -あるきにすと- 高度上昇中

高度上昇中 

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エチオピアに入ってからは緩やかなアップダウンが続き、じわじわと高度が上昇。
山越えとなれば勾配がきつい所もいくつかあり、500メートル上り、500メートル下って300メートル上るというあまり嬉しくない展開を経て2200メートル超に達する。

苦労して上ってきたのに、なぜこんなにも簡単に下るのか。
山越えというものはそういうものなのだけど、少しずつ貯めこんできた高度を一気に下げる時のあの憂鬱に近い気分は歩いている人間かサイクリストくらいにしか理解できないだろう。

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上り終えた後の景色は格別だ。苦しみ抜いた先のご褒美といったところか。
熱を帯びた体に吹き付けるひんやりとした高原の風が最高に気持ちいい。

ほんの少し前までは灼熱の砂漠にいたのだが、ここまで来れば別世界。
実際にあの褐色の世界から歩いて来たわけだが、この2つの世界が陸続きでつながっているという事に実感がわかない。
あの砂漠地帯はそう遠いところにあるわけではなくて、あくまで徒歩圏内にある事がなんだかとても不思議である。

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集落を歩き抜ければ子供達は手を振り、時にはひたすら追いかけてくる。
退屈な日常の中に何やらおかしな人間が現れたのだ。彼らにとっての玩具と化している。
北アフリカやこれまで歩いてきた国々では子供達が追いかけてくるなんて事はなかったが外国人を見れば追いかけるというのはエチオピア人の習性なのか。

大人であっても無遠慮な視線を浴びせ、じっとこちらを眺めている。
前を歩いている人が自分の存在に気づけば何度も何度も後ろを振り返り、見られる側からしてみれば実にうざい。この国には遠慮という言葉はないのだろう。

変な人を指差して「あれなにー」と訊いてくる子供に対し、「見ちゃいけません」的な指導をする親など絶対に皆無であり、日本との国民性の違いを実感するのである。

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食堂に入れば入口はこの通り。
これから手品が始まるわけではなく、飯を食うだけなんだが、好奇心に満ちた無数の目がじっとこちらを凝視している。

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歩行中の食事はエチオピアの国民食インジェラが基本となる。
田舎の食堂ではインジェラ以外の選択肢がない事がほとんど。
クレープのような酸味がかった生地にワットという具がのっていて、これを手で食す。
思えばスーダン以来、現地の食堂で食すときは全て手である。

基本的には歩行中のビールは飲まないように自制しているのだが、ペプシをすすめてきた食堂のおばちゃんに値段を尋ねると「10ブル」と返ってきた。「ビールはいくら?」と続ければ「12ブル」とおばちゃん。
むむむ……、ビールとペプシがわずか2ブル、10円の違いではないか。だいたいビール1本60円なんて安すぎるのだ。
一度崩壊した自制心を取り戻す事はできず、歩行初日以来、昼食はビールにインジェラという組み合わせが続いている。


そういえばトロントで働いていた時、職場にはやたらとエチオピア人がいて食事時には「一緒にどう」とインジェラをすすめられた。
たまに味噌汁を啜り故国の味を思い出すのと同じように、彼らもまた遠いエチオピアの味を思い出していたのだなと田舎の食堂にてかつての同僚の姿を思い描いた。