ブックマーク
ALKINIST -あるきにすと- 汐見荘のサイクリスト

汐見荘のサイクリスト 

汐見荘に到着して間もない頃、宿の片隅に2台の自転車が置かれているのに気付いた。
宿泊客に尋ねてみると、2人のサイクリストが滞在しているとの事。
「日焼けして真っ黒だからすぐに分かりますよ」と彼は言った。

数日後、他の宿泊客とは明らかに異なる褐色の肌を持つサイクリストと出会う事ができた。
同じ宿にいながら彼らと顔を合わせる機会がなかったのは人力旅をする者同士だからか。
町に滞在中は休養に徹する自分と同じく、彼らも部屋から出てこず引きこもっているらしい。

「1日中宿に引きこもり、周りの旅行者からはなんだこいつと思われてるはずだけど、町では何もせずにゆっくり休みたいよね」という言葉に彼らが頷くも至極当然の事。
旅のメインは観光ではなく路上で過ごす毎日、常人の2倍は食べる食事量など、自転車乗りとの共通点は多い。
人力で旅する者にしか理解できない事も多く、そんな事を話し合えるのが嬉しい。

南米大陸を南下してきた彼らにこの先のルート、治安状況を尋ね、情報を交換する。
ガイドブックに載っていない生の情報はとても貴重なのだ。
アウストラル街道、プユアピの南30キロの所で13時から17時まで道路工事で通行止めという有益な情報をプレゼントした。
逆に彼らは「襲われるとしたらあそこですかね」と不謹慎な予想を始め、「そんな予想は頼んでない」と突っ込みを入れる。



コロンビアからウシュアイアまで南米大陸を単独で縦断中の女性サイクリストが汐見荘を去った。女一人で自転車南米縦断とか猛者としか言えない。

迷った末にマチュピチュへ行ったという彼女。「マチュピチュは興味ないから行かない」と言う自分に対し、「一応行っといた方が良いですよ」と助言をくれた。
そんな彼女は1週間も汐見荘にいたのに、9キロしか離れていない世界遺産バルパライソを訪れる事なく、ビーニャを去った。


もう一人のサイクリストは帰国間近であり、汐見荘でのんびりと過ごしている。
卵30個を4日で食い尽くした大食漢。人の事言えないけど、いつもガッツリと食っている印象。
今朝は特大ホットケーキを3枚くらいペロリと平らげ、「美味しそうだね」と語りかけた自分に1枚くれた。チャーシューを自分で作ったり、いつも美味しそうなものを食べている。
料理への情熱が凄まじい。

30個の卵が尽きた彼は新たに30個の卵を買うためスーパーへ行くというので、同行する。
ホットケーキパウダーにシロップ、豚肉のブロックに鶏肉……。
今日で汐見荘滞在8日目だというのに、すぐに出る気がないのでガッツリと食材を買い込んでしまった。

ここにいるべき理由は特にないのだけど最低あと4泊する予定。